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「寒かったんだよ、ねぇ?」
一緒に部屋に入ってきてベッドの片隅に堂々と丸まっている野良黒猫は湊に声をかけられて「にゃあ」と返事をした。
「湯たんぽみたい、ぽかぽかしてる」
ひくひくする喉元にネクタイが絡まり、半開きの双眸でかろうじて自分を見上げてくる伯父。
湊は伯父さんのことを愛している。
近い将来、伯父さんの処女を奪って恋人になる気、満々でいる。
母親が父親を止め処なく想う心が遺伝してしまったのか。
父親は母親のものだし、そもそも父親だから、好きだけれども愛を誓う対象ではない。
父親に顔がまぁまぁ似ていて、とことん甘やかす父親と違って怒りっぽい、よく喚く怒鳴る、何歳も年上のこの伯父が湊はいいのだ。
頑として攻め手サイドにいたがるのは、どれだけお尻を開発されようと処女は死守した父親よりタチ根性を遺伝した証か……。
「ぷにぷにしてる」
湊にきゅっと腹の肉を抓られて。
雄大の下半身はぞくぞくした。
「太ってないけど、痩せてもいなくて、僕、これくらいのお肉でいてほしいな」
「……毎晩飲んでメタボになってやる」
「それって毎晩合コンに出かけるってこと?」
湊が急に上体を倒した。
顔の距離が近くなる。
呼吸が触れ合いそうなくらい。
「そんなことしたら貞操帯つけちゃおうかな」
「……恐ろしい台詞を可愛らしく言うな」
「ふふふっ」
「……その笑い方、母親そっくりだぞ」
その台詞に湊の瞳孔が猫のように開いた。
雄大はどきっと、いや、ぎくっとする。
まぁ確かに母親似と言われたくない年頃か。
弟だって俺に似てるって言われるのを嫌がるときもあったしな。
「伯父さん、お母さんに興味があるの?」
おいおいおいおい。
どうしてそういう風に捉えるんだ。
暴力的なくらいの勘違いだぞ。
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