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第2話
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目が覚めると、見慣れないコテージの天井が飛び込んできた。
「竜也(たつや)、目が覚めたか?」
視界にそう言ながらひょっこり顔を出したのは、恋人の直(なお)だった。黒いつやのある髪が、差し込んでくる朝日に照らされて揺れた。
「直……?」
僕は身体を起こして、まだ意識がもうろうとしていることに気付く。窓の外を見ると、朝焼けの海が広がっていた。
僕はその美しさに一瞬見とれたあと、直を振り返る。
「あれ、なんだかいろいろ思い出せない……」
すると直が僕の手を取って、アーモンド型のきれいな目を潤ませた。
「お前、ビルから飛び降りたんだよ」
どきり、と心臓が動く。その落下する感覚を、覚えてるような気がしたからだ。
「哀れに思った神様が、お前に一〇〇日間の猶予をくれたんだ」
道理で、飛び降りたというのにぴんぴんしているはずだ。ここは現実じゃないということか。きっと現実では身体はぐちゃぐちゃなのだろう。
「猶予……」
ベッドサイドに座った直が、僕をふわりと抱きしめる。
「本当に竜也は馬鹿野郎だな……でも今は何も考えなくていい。一〇〇日間、俺たちはこの島でふたりきりなんだから」
そう言われて僕の胸はキュウと音を立てた。
よく考えたら、なぜ僕は自殺しようとしていたのだろうか。それすらも思い出せないまま、恋人の香りに包まれて目を閉じる。
――一日目の朝のこと。
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