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第4話
水平線に夕日が沈むのを、テラスからぼんやり眺めていると、直がグラスと白ワインを持ってきた。
僕はまだ夢の中にいるような気持ちで、それを喉に流し込む。よく冷えていた。
「なあ、直。僕、なんで自殺なんかしたのかな」
あかね色の空が鈍色に変わっていく。
「さあ、クスリでラリってたんじゃねえの?」
直一流の返事がなぜか心地いい。
油断したせいか、ふと不安を漏らしてしまう。
「この一〇〇日間の猶予が終わったら、僕は本当に死んでしまうのかな……そうしたら、直とももうお別れなのかな」
直がワイングラスをテーブルに置いて、背中から僕の腰に手を回す。その額が僕の僧帽筋にひんやりと触れる。
「本当に、お前は馬鹿だよ……」
「ごめん……直、ごめんな」
鼻の奥がツンとする。どうしてこんな最高のパートナーを置いて、僕は自殺なんかしてしまったのだろうか。直の言うとおり、僕は本当に馬鹿野郎だ。これだから脳筋野郎はだめなんだ。
直は僕を振り向かせると、長いまつげに縁取られた瞳で僕をまっすぐ見つめた。
「そんな馬鹿が、どうしてこんなに愛しいんだろうな」
そう言って、僕のTシャツを引っ張ると唇を重ねてきた。
「……直……!」
僕らは唇をむさぼりながら、ベッドになだれ込む。
「あれ、もうどれくらいしてない?」
直と肌を重ねるのは久しぶりだと思い出す。直は「さあな」といたずらっぽく笑った。そして足の先で僕の股間をつつく。硬くなっているのが分かって、ふふ、と顔を花のようにほころばせた。
キスをしながら服を脱がし合い、僕は直の白い身体のすべてにキスをする。直もその僕の髪を梳いては「あ……」と吐息を漏らす。
胸の突起を口に含むと、直は身体をよじらせた。軽く歯を立てるとくすくす笑う。舌先で転がすと「馬鹿……」と悪態をついた。
ああ、直だ。
もうずいぶんと身体を重ねてきたはずなのに、僕はなぜかひどく興奮していた。
島にふたりきり、という環境がそうさせてくれるのか。
それとも、僕にもう一〇〇日――正確にはあと九七日の猶予しかないせいなのか。
愛撫だけで息を上げた直が、僕の股間に白い手を伸ばす。薄い唇の間にそれを含むと、ちらりと僕を見上げた。挑発しているのだ。
僕は負けまいと直の臀部を撫でる。そして双丘の狭間に指をしのばせた。
「ん……っ、たつ、や」
念入りに準備してくれていたのか、とても柔らかいそこに、僕は指を執拗に出し入れする。そうでもしていないと愛撫されてる肉棒に意識が集中してしまい、もう暴発していまいそうだったからだ。
内壁のもっとも敏感なところに指が触れると、直はびくびくっと反応して背を反らせた。前立腺の柔らかい隆起を、念入りに、円を描くように擦る。
「んーっ、んーっ」
直は我慢ができなくなったのか、僕のものを口に含みながら自分の雄もしごき始めた。僕はそれを阻んで、直の顔をのぞき込む。
「僕ので気持ちよくならなきゃだめだよ」
直は僕のを咥えたまま涙目で顔を真っ赤にする。そして素直に頷くのだった。
ベッドにうつぶせになった直に、僕は張り詰めた自分の雄を挿入する。
その先がゆっくりと沈んでいく間、直はうなじまで赤くして震えていた。
「あ……あ……」
すべてが奥まで入ると、直はほっとしたように身体の力を抜く。それを見逃さなかった僕は腰をぐいと突き上げた。
「あぁっ」
白い手がシーツをぎゅっと掴む。そして僕を振り返り、直は表情だけでキスをねだった。
「ああ、直……きれいだ……大好きだよ……」
僕は直がして欲しいことを、すべてしてあげたかった。
直が、僕を、忘れないために。
「竜也、愛してる……お前のいない世界なんか意味がないんだよ……」
「僕が自殺する前に聞きたかったな」
僕はちょっと直をとがめるように言った。きっと直なら、僕が自殺するほど追い詰められていたことに気づけるはずだ、という甘えからだった。
「ああ、言ってあげられなくて、ごめんな」
身体を揺さぶられながら、直は微笑んだ。
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