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第6話
脳内に次々と浮かぶのは、ある日突然キッチンで昏倒した直の姿、病室に横たわり日に日にやせ細っていく姿。そして、蝉が大合唱する中で静かに息を引き取った姿――。
思い出してしまった。
僕が自殺した理由を――。
病死した最愛のパートナーを追って、僕はビルから飛び降りたのだ――。
僕はすでに嗚咽を漏らしていた。
「一周忌までは……ちゃんとやらなきゃと、思って……」
「うん、見てたよ。死んだらみんな次の〝出番〟が来るまで現世を見守るのが仕事なんだ」
「それが終わったら、直のところに行こうって決めてて……」
「ああ、一年がんばったな」
直がどんどん透けていくのは、僕の視界が涙でぼやけているせいではない。
「やっと一緒にいられると……」
直は僕の頭をくしゃりと撫でて、キスをした。
「いられただろ? 一〇〇日間も」
「嫌だよ、これからもずっと――」
「竜也、聞いてくれ。俺は幸せだよ、お前が生きてくれている限り」
そう言い終えると、直は顔をくしゃくしゃにして笑った。
僕はショックだった。
そう言われてしまっては、死ねなくなるではないか。直の後を追うことを、許されなくなってしまうではないか。
神様がくれたのは〝死に際の猶予〟ではなかった。
生きるために、恋人との別れを惜しむ猶予、だったのだ。
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