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第3話

「暇じゃない、って言ってるだろ。他を当たれ」 「そんな事言わないでさ」 「せっかくのイベントなのに一人ってつまんないだろ」 「もし誰かと待ち合わせなら、俺等ん所で待ってりゃいいよ」  諦めるって事を知らないのか、コイツ等は。数で押してくるように畳み掛けてきた男達に、不愉快さが我慢できずに俺はもう一度、大きく溜息を吐いた。  泰弘の男らしく整った顔とは比較にも成らないけど、まぁコイツ等も世間一般的には顔は悪い方ではない。だから、いつもはこういった誘い方で女性を誘っても、どうにか成っているんだろう。  だけど男で、少しでも早く泰弘を見つけ出したい俺にとっては、こんな状況は迷惑でしかなかった。  言葉がろくに通じない奴を相手に、どうすれば良いのか。こういった奴等を上手く躱しきれるぐらい、こんな所に慣れていない。一時間かけても見つからなかった泰弘をこの後どれぐらいで見つけ出せるかも分からないのに、こんな奴等にこれ以上時間を割かれるのは心の底から嫌だった。 「うーん、もし絶対にムリって言うならさ、せめてこのグラス一杯ぐらいは付き合ってよ」 「ここでで良いし」 「はい、グラス。ジンライムにしたけど、お兄さんは甘めが良かった?」  なんで付き合う事になってんだ。返事も聞かない内に差し出されたグラスを俺はしぶしぶと受け取る。  ジンライムだって嫌いではないけど、どちらかと言うと甘めのカクテルの方が好きだ。いや、そうじゃなくて。だからなんで、俺が付き合わないといけないんだ。 「グラス一杯だけだからさ」 「そうそう、ほら乾杯するぞ」 「はい、乾杯ー!!」  無理やりグラスを合わせといて、乾杯も何もないだろう。正直な所、俺は納得はできていなかった。それでもまぁ、これさえ飲めば解放されるっていうんだから、我慢してやる。……そう、我慢してやるつもりだったけど。 「……っまっず、えっ、これ本当にジンライムか?」  半分ぐらいまで一気に飲んだグラスを、堪えきれずに俺は改めて見つめ直した。  匂いはライムの良い匂いだけど、口の中の後味がいつものジンライムとは違っている。 「……なんで、こんなに苦いんだ?」 「あれ?お兄さん、やっぱり甘い方が良かったのかな」 「ジンだと、ちょっと辛すぎった?」 「いや、さすがにこれぐらいは飲めるだろ」  だから、なんで三人で畳み掛けるようにいつも話してくるんだ。まぁ、個別に話し掛けられたとしても鬱陶しいだけだからいいけど。それにしても、こんなクッソマズイ味のカクテルを、泰弘がイベントで出している事が俺にはびっくりだった。  でも今は味なんかに構っていられない。飲めばコイツ等から解放されるんだから、飲むしかない。クッソマズイが頑張れ俺!! 「ちょっと貸してみろ」  勢いをつけて一気に流し込もうとしてたグラスが、ひょいと伸びてきた腕に奪われる。その腕にエッ?と思ったのは俺だけじゃなかったようだ。

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