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第6話

「ひゃっあっ」  思わずヘンな声が漏れ、俺は慌てて口を両手で押さえる。なんでだ。たったこれだけの刺激なのに声が出てしまうぐらい、ビリビリとした感覚があった。  とりあえず泰弘の体を押し返したくて、振り返ろうとした身体を今度こそ泰弘の両腕に抱き留められる。 「なっ、なに??」 「Trickだろ」  言葉と一緒に泰弘の指が、シャツのボタンを外していた。 「ちが、う、ちがっ」  イタズラをするのは俺の方であって、される予定じゃない。 「やめろって、脱がすなってば」  なんで一生懸命止めてるのに聞いてくんねえんだろう。ガラスと泰弘の体に挟まれて振り返る事が出来ないまま、ついに俺のシャツのボタンが全部外される。身体が熱い。だけど服を着ていたら感じることのないはずの場所に冷たい空気を感じて、俺はぶるっと体を震わせた。 「立ってるな」  何の事だ。そう思ったのは一瞬で、胸から走った強い刺激に俺は体を仰け反らせる。ジンジンと痺れるような疼きが残る場所に目を向ければ、日頃は存在すら忘れていた両胸の突起が、赤く色付いて立っていた。男なのにこんな所が感じるなんて、思ってもいなかった。 「いや、だ、やめっ」  軽くつままれ、指先だけで擦られる。たったそれだけの動きなのに、こんなに感じるなんて訳が分からない。こんなに急に腰が熱く重たくなった事なんてないのに。 「いや?何でだ、お前のモノもこんなに固く成ってるのに?」  何でもなにも、こんな場所だ。下のフロアから見上げれば、一発で俺が何をされているのかなんて分かってしまうだろう。  赤の他人として、今夜のお前の遊び相手に選ばれたいとは思っていたけど、まさかこんな所でやるとは思っていなかった。 「見える、から……ここは、いやだ……」  人に見られて喜ぶような性癖は持っていない。本音を言えば、みっともない姿になりそうで、泰弘にだって見せたくないぐらいだ。 「誰も気にしないさ、こんな所」 「そんな、わけ、ないだろ……」  何たってVIPルームだ。人影があれば、どんな奴がそこに居るのか、何となく見てしまう奴は多いだろ。  それとも泰弘は遊び相手にいつもこういったプレーを求めていて、俺がそれに付き合えなければ、やっぱり他の相手に交代させられてしまうのか。それはイヤだ。でも、泰弘以外の奴にこの行為を見られるのもイヤだった。  どうしていいのか分からずに俺の目からボロボロと涙が落ちていく。 「やだ……いやだ、泰弘、やだ……」  もう何がイヤなのかも分からない。それでも俺は身体に回された泰弘の腕にしがみつきながら、ひたすらそうやって泣くしかなかった。

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