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意識する心は正直に

 ***  花火大会の日。  年下に、しかも男の生徒に唇を奪われた。  1分、いやそれ以上、触れるだけのキスをされ、ゆっくり離れた黒谷はにやっと笑い『オレ本気ですから』と言葉を残した。  その表情が、色っぽく、煽情的で、年下なのにドキッとしてしまった。  軽薄そうな唇、でも柔らかかった……。  あぁーもう。忘れろ忘れろ。  本気なわけないだろ。  あの黒谷だ。女遊びの激しい、学校中の女子生徒に手を出しているような男だ。  ただ、からかって笑いものにしようとしただけ。  そう分かっているのに、それが少し寂しく思う。  って、そんなわけないない。  職員室。俺は変な思考を吹き飛ばすため自分の頬を強く叩く。  生徒たちは夏休みに入り、授業はないが、希望者だけ課外を受けるために学校に来ている。  課外といっても、大体の生徒が数学や物理、化学などの理系科目の授業を希望しているので、俺は課外授業はしなくてもいい。  しかも部活の顧問も受け持っていない。つまり、夏休み期間はまあそれなりに暇だ。  図書室でも行こうかな。  今の時間は課外授業をしている時間だ。生徒はいないだろう。  俺の読み通り図書室は人一人おらず、窓も閉めっぱなしのため暑い熱気がこもっている。    俺は換気のため窓を開ける。  生ぬるい風が図書室の中へと入ってきた。  窓開けても暑いな。  とはいえ、俺ひとりしか利用していないのにクーラーをつけるのは躊躇ってしまう。  …我慢しよう。 『かーいとっ!』  窓の外から高い甘ったらしい女の声が、俺の頭の中を埋め尽くしている問題のやつを呼ぶ声が聞こえる。  図書室は2階。その真下にはちょうど芝生が敷き詰められた中庭がある。  俺は窓の外から下を見た。  芝生の上には、制服をだらしなく着崩した男――黒谷が仰向けで寝っ転がっている。  てか、真夏によくあんなところに寝られるな。 『あぁ~。何?』  先ほど名前を呼んだ女子生徒、黒谷と同じクラスの子が寝っ転がっている黒谷の横に体操座りで座っている。  膝上の短いスカートを履いた女子生徒。あれ、パンツ見えそうだけど。 『ねぇー。私、かいとに告白したんだけど、返事もらってないんだけどー』  黒谷の上に覆い被さるように顔を近づけた女子生徒。

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