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意識する心は正直に
ほらな。こうやって、色んな女と関係を持つような男だ。
今だってあの女子生徒とキスしているんだろう。
女子生徒の返事を言う黒谷の声が聞こえない。
こんなところ見てるだけで、虚しくなる。
俺はこの場から離れ、本棚の方へと移動した。
花火大会の日から、ずっとずっと思い出される黒谷の顔。
認めたくないから、心の中で必死に否定の言葉を並べていたけど……俺は黒谷のことが好きだ。
何であんなやつ、年下で生徒、女ったらしの遊び人なのにな…。
適当に本棚から本を持ち出し、席に着いたが黒谷のことを考えている頭で本の内容なんかに集中出来る訳もなく、俺は本を机の上に置いたままうつ伏せた。
いつの間にか眠っていた俺は、窓から入ってくる夕日の熱さで目が覚めた。
「あっ。せんせー、おはようございます」
うつ伏せていた顔を上げた真っ先に視界に入ってきた、笑顔の男の顔――黒谷が俺の隣に頬杖をついて此方を見ている。
「何でお前こんなところにいるんだ?」
にこにこ笑顔の黒谷。
俺は黒谷の顔を訝しげに見た。
「何でって…それこっちのセリフですけど…。中庭から図書室にいるせんせーの頭が見えたんで来てみたら、寝てるし」
口を尖らせいじけたような表情をしている。
「お前、ずっとここにいるのか?」
「はい。ずっとせんせーの寝顔見てました」
そう言い、きっちりセットしている俺の髪を撫でた黒谷は、じっと俺の瞳を見ている。
俺はその視線に耐えられず、俯いた。
……でもこいつ、あの女子生徒と…
「せんせー、中庭にいる俺をここから見てたでしょ?」
髪を撫でながら問いかけた。
「……で、せんせーのことだから何か勘違いしてるでしょ?」
「はっ?」
俯いていた顔を思わず上げてしまった。
優しい表情で、でも色気が漏れている黒谷の顔が至近距離にあった。
「ちょっ…ち、」
またもや最後まで言い切る前に奪われた唇。
今度はあの時のような触れるだけの優しいキスではなく、唇を食べる勢いの獰猛なキス。
呼吸すらできないぐらいのキス。
口内を黒谷の舌が好き勝手に犯し、やっと離れた唇。
ふたりの間を繋ぐように銀色の糸が伸びている。
「こういうことも、それ以上もせんせーと以外したくない」
息が乱れている俺の頬を優しく撫でつつ、甘い声で囁いた。
「…でも、お前ここの女子生徒全員とそういう関係なんだろ!?」
俺はその手を振り払う。
そうやってまたからかって、俺を笑うんだろ。
「それとか、噂だし。オレそんな節操なしなやつじゃないけど?」
「はぁ?」
振り払った手をもう一度俺の頬に戻した黒谷は優しく撫でながら、俺の耳たぶにも触れた。
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