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お揃いキスマークと突然の告白
どうも、碧のことは気に入らないようだ。
とりあえず、この場を離れよう。
俺は高宮にも軽く挨拶をし、黒谷とその場を離れた。
碧たちとは離れた場所に腰掛け、黒谷も後を追うように俺の隣に座る。
「――あの人が、碧さんなんですね」
俯いていて表情は分からないが、そう呟いた黒谷。
「あぁ。てかそんなことより、たこ焼き食うぞ」
俺は俯いたまま黙っている黒谷の空気に耐えられず、明るい声で黒谷の持っているたこ焼きを奪った。
パックの蓋を開け、竹串をたこ焼きに刺して黒谷に渡す。
「………比呂せんせーは優しすぎます…」
自分の分も竹串に刺してたこ焼きを口に入れようとした時、黒谷がぼそっと呟いたのでそちらに視線を向けた。
優しい…?
たこ焼きを渡したぐらいで優しいって、どんだけ人の優しさに飢えてるんだこいつ。
眉をひそめ俯いたままの黒谷を見ていたが、いきなり顔を上げて俺の方を見た。
黒谷は眉尻を下げて、悲しそうな顔をしている。
え、え。どうしたんだ?
先ほど、碧と会った時は少し険を帯びた攻撃的な表情をしていた。
「あの人……碧さんのこと好きなのに、碧さんと隣にいた人を引っ付けるの比呂せんせーが手助けしたんですよね…?」
「え?」
何でこいつがそれを知ってるんだ?
「あの時、社会科室で泣いてましたよね」
「…それは…!」
確かにあの日。
高宮と会って碧のことを話した日の放課後。
俺のテリトリーでもある、社会科室で柄にもなく泣いてしまった。
でもあれは誰にも見られていないと分かっていたからで――実際、放課後っていっても、19時を過ぎて部活の生徒も全員帰っていた時間だった。
「声押し殺したように泣いてましたけど、たまたま教室の前通ったら比呂せんせーの泣く声が聞こえたので……」
不覚だった。よりにもよって、生徒に見られていたとは…。
「オレ、そんな面倒見よくて優しい比呂せんせーが好きです」
たこ焼きが刺さっている串を持った俺の手を両手で包み込んだ黒谷、熱の篭った瞳で見ている。
「え?え?でもお前……」
女好きだろ。
とっかひっかえ女を変えて遊んでいるようなやつだろ。
「からかっ………」
からかってるのかと聞く前に、黒谷の唇が俺の唇を奪った。
唇同士が引っ付いているキス。
空には花火がドーンドーンと上がり始めていた――。
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