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ヒーローな彼

 ◇◇◇◇ 「先生、もうすぐいなくなるんでしょ?」  近所の学習塾の教室。  現国の授業を終えた俺の周りに一斉に集まってきた高校生の生徒たち。 「来週までだね」  教学部の大学を卒業後、この学習塾で塾講師として雇われた俺だったが、去年の10月にある公立の高校から現国の先生として来てください。というお誘いを頂いた。  何故、塾講師の俺なんか?と思ったが、元々、学校の先生になりたかった俺はそのお誘いにふたつ返事でOKした。 「そっか……。碧先生の授業好きだったのにな?」  ひとりの女子生徒が悲しそうな顔で呟いた。  生徒に自分の授業が好きと言われて嬉しかった俺は、その子の頭を撫でてしまっていた。 「……先生?」  しまった。流石に生徒の頭を撫でるというのはいけなかった。しかも女子生徒の頭を。  俺は慌てて手を教卓に戻し、持ってきていた教材と筆箱を持って「あとちょっとだが、よろしくな」と言い教室を出た。  この授業で最後だった俺は、残っていた同僚に「お疲れ様です」と挨拶し、待ち合わせ場所である駅前へと向かった。  大学時代の同級生、真中比呂に高校で教えることになったということを報告していなかったので、今日はその報告のために会うこととなった。  真中はこの近くの公立の男子高校で地理を教えている。  容姿がずば抜けて整っている、所謂イケメンで、大学の頃からモテていたが、女の子からの告白をOKしたことはなかった。

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