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ヒーローな彼
駅前の小さな噴水前。
先に着いていた真中の姿が目に入った。
焦げ茶色の髪はオールバックにセットされて、教師になってから掛け始めた銀色のフレームの眼鏡が知的な雰囲気を醸し出している。
180はないが、そのぐらいの長身にグレーのスーツがすごく似合っている。自分のスーツ姿との差に悲しくなる。
「よっ!」
俺に気づいた真中が右手を上げた。
小走りで真中の元へ向かった。
「ごめん。待ったか?」
「いや、俺も今来たとこ」
真中は「居酒屋でも入るか」と言いながら歩き出したので、その後をついて行った。
近くにあった大衆居酒屋のテーブル席に着いた俺達。
20時過ぎ。時間的にも丁度人の数も多く賑わっている。
真中がビールと適当に料理を頼んだ。
店員がビールとお通しのきんぴらごぼうを持ってきたのでとりあえず乾杯をし。ゴクゴクとビールを飲んでいる真中。
「いきなり、碧から連絡来てびっくりしたけど、どうした?」
スーツのジャケットを脱ぎ、腕まくりし、掛けていた眼鏡も外した真中。
「え、眼鏡……」
真中の質問よりも眼鏡のことに触れてしまった俺に笑いながら、「これ伊達だがら」と答えた真中。
「で、どうしたの?」
何で伊達眼鏡を掛けているのか聞こうとした俺に、真中はもう一度質問してきた。
そうだった。今日は真中に報告するために呼んだんだ。俺はビールを一口飲み、目の前の真中の目をじーっと見た。
「――実は……4月から紀陵高校の教職員になります」
俺は少し声が大きくなったが、周りも賑わっているので誰も俺の声に気にも留めていない。
驚いているのか、少し目が見開いた真中。
「とりあえずおめでとう。良かったな」
先に口を開いたのは真中。笑顔で祝福した。
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