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ハグの日、キスの日SS

真中比呂side 「ねぇねぇ今日ってハグの日なんだって」 「えっまじ!?じゃあ彼氏にハグしちゃおうかなぁ〜」 「はい、でたリア充」 8月9日。 夏休み真っ只中。 俺の勤める高校は夏休みも希望者に向けての課外授業があるため、プリントの準備や課外授業で使う資料の準備などで忙しく、教師に夏休みなどない。 今もこれから、授業なのだが―― 教室に少し早く着いてしまった俺は、教卓の前で授業の準備をしながら、前の席に座る女子生徒の会話が耳に入ってきた。 なんで、今日がハグの日、なんだ? 俺は不思議に思いながらも、一年には祝日以外にも色々な日があるんだな。と気にも留めなかった。 ✳︎ 先ほどの授業で最後だった俺は、職員室で明日の授業のプリントを作成していたが、プリントが作り終わる頃には職員室には誰もおらず、外も真っ暗になっていた。 「あっ、センセーいた!」 軽く伸びをしていた俺を呼びかける間延びした声の持ち主は、真っ直ぐと俺のデスクの方へと歩いてくる。 「お前なんでまだいるんだ?」 壁にかけている時計を見ると、針は8時を指している。 課外授業が終わったのが4時なので、4時間は経っている。 「センセーを待ってたんだよ。もう仕事終わったの?」 「あぁ。てか遅くなるって親御さんにちゃんと連絡したか?」 「もちろん!センセーうるさいから、ちゃんと母親にはメールしといたよ」 「うるさいとはなんだ。重要なこ………」 「あ、センセーそういえば今日何の日か知ってる?」 俺の言葉を遮るように被せてきた声。 黒谷はしれっと俺の隣の席に座る。 「今日って………」 確かハグの日。女子生徒がそんな話をしていたなー。 「センセーのその顔は何の日か知ってそうだね」 俺にゆっくりと近づいてくる黒谷。 改めて見ても、こいつ整った顔してるよな。 二重の瞳はタレ長で、顔の中心にすっと通った高い鼻、軽薄な唇。 「そんなに俺のこと見つめてどうしたのセンセー」 「……いや見つめてない…」 俺は黒谷に見惚れていたことが恥ずかしくなり、慌てて視線をそらす。 こんな軽くてチャラい男なんか俺のタイプじゃなかったのに、いつのまにかこいつのことが自分で驚くぐらい好きになっている。 「ねぇ何の日か知ってるなら、センセーから俺にしてよ」 顔をさらに近づいて囁く。 その顔はニコニコ笑顔で、腕を大きく広げている。 なぜかその姿がいつもの黒谷より少し可愛く見えて、俺は黒谷の胸の中に顔を埋める。 「え、センセー大丈夫?具合でも悪い?」 黒谷は自分から言ったのに、焦ってオロオロしている。 俺はそんな黒谷の背中に手を回し、「今日はこういう日なんだろ?」と黒谷の耳元で呟く。 黒谷の汗と石鹸の混じった匂いが鼻腔を掠める。 俺はそんな黒谷の匂いが好きで、思わず首筋に鼻を近づけていた。 黒谷の腕が俺の背中に回り、ぎゅっと強く抱きしめられる。 「ねぇ、センセー誘ってる?」 黒谷が俺の耳にふーっと息を吹きかけ囁く。 その声は普段より低くて色っぽい、煽情的な声。俺はこの声に弱い。 抱きしめていた俺をゆっくりと離す黒谷の顔は、熱っぽくて――そんな顔がゆっくりと俺の顔に近づく。 「………ちょっと……」 ここ学校だぞ。そう言葉を発する前に、黒谷の赤い綺麗な唇に塞がれた。 食むように何度も何度も角度を変えながら塞がれる唇に、俺は鼻で呼吸をするのも忘れ必至に黒谷のキスに答える。 が、息が苦しくなり、思わず口を開けてしまう。 そんな俺を待っていたかのように、黒谷の舌が口内へと侵入してくる。 歯列をゆっくりなぞる黒谷の熱い舌。体の力が抜けていく。 「………んっ……」 鼻に抜ける声が漏れる。 黒谷は俺の舌に自分の舌を絡め、名残惜しそうに離れる。 「続きは今度センセーの家でしたいな」 最後に耳元で囁いた黒谷の声に俺は頷いてしまった。 ――――――――――――8月9日はハグの日だけど、俺たちだけの特別な日、キスの日にしてもいいかもね」 「はぁ?何だよそれ」 「えー、いいと思う。センセー可愛かったなー」 黒谷のそんな嬉しそうな顔を見ると、キスの日でもいいかもな、と思ってしまう俺は相当この恋人のことが好きなようだ――――。 ハグの日、キスの日 おわり

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