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再会は運命的に
「ごめんなさい。返すの遅くなってしまって……」
俺は笑顔の高宮さんの前に持ってきたハンカチを渡した。
そのハンカチを受け取った高宮さんは
「返すのはいつでもよかったんだけど……柏木先生から電話が掛かってこなかったのがちょっと寂しかったな……」
と小さな声で呟いた。
自分がちょっと勇気を出して電話すれば、高宮さんはこんな寂しそうな顔はしなかったんだ。
俺は電話できなかった自分に後悔した。
「本当にごめんなさい。……緊張してなかなか電話が掛けられませんでした……」
高宮さんの寂しそうな顔を見ていたら、無意識に電話を掛けられなかった理由を言ってしまっていた。
「――そうだったの?」
ふふ。と笑った高宮さん。
恥ずかしい…。一気に顔に熱が集まってきた俺は、手で仰いで少しでも熱を飛ばそうとした。
「じゃあ俺が柏木先生の番号を聞けばよかったね」
見惚れてしまう綺麗な笑顔でそう言った高宮さん。
「じゃあ、この機会に連絡先交換しよう。電話は緊張するからメールでのやり取りの方がいいよね」
ズボンのポケットから黒色のスマホを取り出した高宮さんは、緑色のトークアプリを開いて俺に見せた。
俺も慌てて自分のスマホでそのアプリを開いて、高宮さんと連絡先を交換した。
これで少しは高宮さんに連絡できるかもしれない。
何て送ろうか、かなり迷うだろうけど――。
「職員室の席も隣だし分からないこととかあったら言ってね」
「はいっ!よろしくお願いします!」
俺は初恋の人とこうやって、同じ職場で3年前では考えられないぐらい高宮さんと会話しているということに嬉しくて、大きな声で返事していた。
高宮さんはそんな俺を見て、また笑っている。
そのあと、高宮さんに学校内を案内してもらい、昼前に一緒に職員室へと戻った。
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