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理想の朝ご飯
少し大きめの洗面台。
汚れ一つ無く綺麗だ。
俺は水を出し顔を思いっきり洗った。
まだおでこに高宮さんの手の感触が残っている。
はぁー。
高宮さんに迷惑かけちゃったな……。
俺は顔を洗い、高宮さんのいる所へと向かった。
広いダイニングキッチンに、ダイニングテーブル。
ソファーにテレビ。
黒と白で統一された部屋は、無駄なものがなく綺麗だ。
ダイニングテーブルには二人分の朝ご飯が置かれている。
「食べよう。ほら座って」
立ったままテーブルの料理を見ていた俺にそう声をかけた高宮さんは、椅子を引いて俺を座らせた。
雑穀ご飯に具沢山の味噌汁、鮭の切り身に卵焼き、ほうれん草のおひたしとまさに理想的な朝ご飯が並んでいる。
「これ、高宮さんが作ったんですよね?」
向かいに座った高宮さん。
「碧、もしかたら二日酔いかなって思って和食にしてみました」
「……あお?」
いきなり名前で呼ばれたことに驚く。
え、え、高宮さんが俺のこと名前で……。
聞き間違いじゃないよね?
「昨日、碧がこの呼び方OKしてくれたんだけどなー」
「え、そうなんですか?」
「やっぱり覚えてないんだね……」
寂しそうに言った高宮さん。
「碧も職場以外なら俺のこと、千秋さんって呼んでくれるって言ったんだけどな…」
「それって……」
綺麗な眉と目尻が下がりますます寂しそうな顔の高宮さんを見て、本当ですか?と聞くのはやめた。
この顔を見る限り本当だろう。
酔っていたとはいえ、意外と大胆なことをしてしまった俺。
普段、千秋さん。なんて呼べるわけないよ…。
「碧には千秋さんって呼んで欲しいなー」
戸惑っている俺を真っ直ぐ見ている高宮さん。
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