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理想の朝ご飯

「そういえば、碧の家から紀陵ってちょっと遠いよね?」  全部の食器を洗い終わった千秋さんは、一緒に食器の水気を拭きながら聞いてきた。 「そうですね。電車で1時間くらいですかね」 「朝早く起きないといけないし、大変だよね?」 「まぁ、電車の中で居眠りしちゃうかもですけど…」 「――もしよかったら、ここで一緒に住まない?」  ………はい?  俺は持っていたグラスを落としてしまった。  グラスはプラスチックで、割れなかったからよかったけど、今、千秋さん……何て言った? 「俺の家の方が紀陵に近いし、朝もちょっとゆっくり出来ると思うよ」  一緒に住むって………え。 「そんな、高、千秋さんに迷惑になるので……」  朝起きてから、夜寝るまで千秋さんが近くにいるって緊張しすぎて、休まる日がないよ…。 「迷惑なことないよ。俺は碧と一緒に住みたいなー」  千秋さんは隣にいた俺の方に体ごと向けて、真剣な表情で言った。  ヘーゼル色の瞳に吸い込まれそうなぐらい見詰められている。 「……あの…俺実家に住んでて、親が何て言うか……」  俺は目線を逸らしながら言った。  成人した男とはいえ、自分の子が同じ職場の人と一緒に住むなんて、親が何て言うか分からない。 「じゃあ今日、俺が親御さんに挨拶しに行こう」 「……えっ?」 「碧の家に行く準備しないと」 「ほんとに行くんですか?」  慌てて出掛ける準備を始めた千秋さん。

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