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反則の眼鏡
あの後、黒色のスキニーパンツと白のシャツに着替えた千秋さん。
スーツ以外の服装を初めて見たけど、やっぱりかっこいい。
シンプルな服装なのに、長身のモデル体型の彼が着ると、どこかのブランドの服のように華やかに見えるから不思議だ。
俺は昨日来ていたスーツのまま、マンションの部屋を出た。
エレベーターに乗ったところで、部屋が15階だということに気づいた。
ずっと実家暮らしだけど、マンションの15階ってまぁまぁ高いよね。
そのまま、地下の駐車場に停めていた車の鍵を開け、助手席の扉を開けて俺をエスコートした。
そんな所作もあまりにも当たり前にやってのける千秋さん。
俺が車に乗り込んだのを確認し、扉をゆっくり閉め、自分も運転席へ乗り込んだ。
「念のためナビ設定するから、住所教えて」
車のエンジンをかけ、持ってきていた鞄から黒縁の眼鏡を取り出し掛けた千秋さん。
……眼鏡。
千秋さんの眼鏡姿、かっこよすぎてつい見惚れてしまっていた俺。
「どうした?」
ぼっと眼鏡姿の千秋さんの横顔を見詰めていた俺は、千秋さんが此方を見たことで我に返った。
「あー。すみません。住所ですね」
恥ずかしくなり、早口で家の住所を言ったが、しっかり全て聞き取った千秋さんはナビを設定し、車を走らせた。
「……ち、千秋さんは視力悪かったんですか?」
千秋さん呼びに少し緊張して上擦ってしまった。
「ううん。両目2.0だよ」
丁度、信号で止まり俺の方を見た千秋さん。
真正面から見ても、眼鏡姿の千秋さんはかっこいい。
こんなにも、黒縁眼鏡が似合う男性がいるんだな。
「今から碧の親御さんに挨拶に行くから少しでも印象よくしないとね」
「――眼鏡掛けなくても、全然いけそうだけど……」
そんな俺の小さな呟きも聞こえた千秋さんは微笑んだ。
「でも、碧、眼鏡男子好きそうだから、掛けたままにしよう」
「えっ?」
「さっきから俺のこと見てるから、好きなんでしょ?」
いや。それは千秋さんが掛けてるから好きであって、他の人が眼鏡を掛けてても別に…。
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