27 / 132
恋人キス
結局お金を払えないまま、車に乗り俺の家まで走っている。
「じゃあもし一緒に住めたら、食器とか必要なもの割り勘で払おう」
「いや、今度こそ俺が払います」
食器とか自分が必要なものだから、自分で出さないと。
「ううん。割り勘にしよ。でも本音は恋人にはお金は出させたくないんだけどね」
「…………ん?」
今、千秋さんの口からとんでもない言葉が聞こえてきたんだけど……空耳だよね。
運転している千秋さんの横顔をじっと見る。
「そっか。碧、覚えてない、よね」
「何がですか?」
赤信号で止まった車。
此方に顔を向けた千秋さんの目は熱が篭っているように見える。
「昨日、俺に告白したこと」
―――告白…。
告白って、好きな人に自分の思いを伝えること。だよね…。
「えぇーー!?」
「碧、酔ってたけど、本当の気持ちでしょ?」
そりゃあ、酔っていたとしても、好きでもない人には告白しないけど。
「嬉しかったよ」
甘い声でそう囁いた千秋さんの顔がどんどん近づいてくる。
毛穴ひとつない肌。高い鼻。くっきり二重の瞳。
固まってしまった俺は、近づいてくる千秋さんの顔を見詰めることしか出来なかった。
――チュッ。
そんな綺麗なリップ音とともに、柔らかくて少し肉厚の唇が俺の唇に触れた。
………キ、キ、キス…された。
そのまま何回も角度を変えながら、俺の唇を吸ってくる千秋さん。
目を開けたまま呆然としている俺に、唇を吸いながら目を開けた千秋さんと至近距離で視線が交わった。
千秋さんのアーモンド形の目、ヘーゼル色の綺麗な瞳が熱を持って色気を醸し出している。
ブッブッーッ!
そのまま流されるように瞳を閉じようとしていた時、後ろの車からのクラクション音に我に返った。
ともだちにシェアしよう!