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挨拶は強引に

 リビングのソファーに座った俺たち。  母さんは鼻歌を歌いながら、キッチンで紅茶の準備をしている。 「母さん、父さんは?」  休みの日は、リビングで新聞や小説を読んでいる父さんの姿が見当たらない。 「お父さんなら職場の人とゴルフに行ったわよ」  お盆にお皿と紅茶の入ったティーカップを持ってきた母さんは、俺の横に座った。  そっか。  父さんがいないのに、千秋さんの家にお世話になるって話をしてもいいものだろうか…。 「これ、お父さんの分も買ってきたので、帰ってきたらぜひ勧めてみてください」 「あら~。ありがとうございます。これなら、お父さんも食べると思います」  ケーキの箱を開け中身を確認した母さんは、持ってきた皿にケーキを取り分けていった。  このまま、千秋さんは一緒に住むことを言うんだろうか。  千秋さんを見ると、落ち着いた様子で、母さんが入れた紅茶を飲んでいる。  カップをソーサーにゆっくりと置いた千秋さんは、母さんに一緒に住むということをいきなり切り出した。  母さんは案の定、ショートケーキを食べている手を止め、千秋さんと俺を交互に見ている。 「紀陵高校から私の家の方が近いので、私から提案したんです」  目をこれでもかと言わんばかりに、見開いている母さんが千秋さんの顔をじっと見ている。 「千秋さんはそんないいんですか?」 「はい。教師って仕事は朝も早いし、夜も遅くなったりするので、私の家から通えば少し碧さんが楽になるかなと思いまして…」  真剣な顔で母さんを見ている千秋さん。  そんな千秋さんの顔に照れたのか、ほんのり頬を染めた母さんは「……お願いします」と呟いた。  ……お願いします。って、え?何、了承したの?  千秋さんも母さんのその答えに驚いた顔をしている。

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