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甘々デート
――そんな感じで千秋さんに流されるがまま、様々なテナントが入っているショッピングモールへとやって来た。
ショッピングモールの1階のホームセンターへ俺を引っ張った千秋さん。
「最初に食器を買おう」
「食器ですか?」
「そう」
返事をし、食器コーナーを目を輝かせながら見ている千秋さん。
なんか、可愛いな。
真剣に食器を見て回っている千秋さんの後をついて行きながら、こっそり千秋さんを見詰めた。
良さそうな食器を手に取って、うーん。うーん。って首を傾げて考えている。
「これとかいいよね」
ずっと千秋さんを見詰めていた俺に、両手で持っているマグカップを見せた。
左手に持っているのが青色の、右手に持っているのが赤色のシンプルなマグカップ。
「これって……」
ペアマグカップ。
「うん。これ買おう」
固まって返事もしない俺に気にもとめず、マグカップを持ってレジへと向かった千秋さん。
ペアマグカップにはびっくりしたけど、嫌ではない。むしろちょっと嬉しいかも。
レジでお金を払ってきた千秋さんがご機嫌に、俺の所へとやって来た。
「もしかして千秋さん、最初からペア食器を買いに来たんですか?」
結局あのマグカップ以外は何も買わずに、ホームセンターを後にした俺たちは、賑わうモール内を歩いている。
「うん。せっかく一緒に住むなら碧とお揃いのものが使いたくてね」
横にいる俺の方をとろけるほどの笑顔で言った千秋さん。
一気に鼓動の早くなった心臓を収めるため、何も言わず千秋さんから視線を逸らした。
「まだ、お昼食べてなかったから、お腹すいてない?」
俯いて歩く俺の横から優しく問いかけるように聞いてきた千秋さん。
14時前。
朝、食べて以降何も食べていないから確かに少しお腹すいたかも。
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