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甘々デート
両手にドリンクカップを持って千秋さんの元へ戻ると、すかさず俺の持っているカップを奪い取り、歩いて行った。
俺の分まで持ってくれなくてもよかったのに。
俺は何も言わず、千秋さんの後をついて行き劇場の中へと入った。
席は中間あたりの列の、右端の2人席。
端だからちょっと見にくいけど、隣に知らない人が座らないので少し気が楽だ。
2人で並んで座り、俺の飲み物をホルダーに入れてくれた。
CMで見た時から気になってたから、楽しみだな。
俺はうきうき気分で、最初の新作案内のCMから食い入るようにスクリーンを見た。
映画も中盤。クライマックスで犯人がもうすぐ分かるというところ。
いきなり自分の膝に置いていた左手が、握られた。
長い指で、俺の指を絡めてくる。
まるで恋人つなぎのように俺の手を握ってくる。
長くて綺麗な指だと思っていたけど、触れてみると節が骨ばっていて、男性の手だ。
俺は隣にいる千秋さんの顔を横目で見た。
千秋さんはスクリーンじゃなくて、此方をじっと見ていた。
俺はその視線を慌てて逸らし、スクリーンを見たが、繋いでいる手、体温が気になって物語には入り込めない。
ただスクリーンを見詰めている状態のまま、映画はエンディングを迎えていた。
完全に映画が終わり、照明が明るくなっていくと、繋がれていた千秋さんの手は離れた。
掌はじんわりと汗が滲み出てる。俺はその汗をズボンで拭いた。
「行こうか」
ぼーっと座っていた俺は立ち上がった千秋さんに我に返った。
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