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甘い夜のはじまり
まさかあんなにタイミングよく再会するとは思わなかった。
でも千秋さんに助けてもらえて、嬉しかったなー。
口元が緩んでにやにやしてしまっていた俺は慌てて顔を引き締め、千秋さんの顔を見ようと体を向けようとした。――が、腕を引っ張られ千秋さんの腕の中へと引き込まれた。
爽やかなレモンの香り。千秋さんの温かい胸の中。
ぎゅっと俺の背中に回している腕。
いきなり抱きしめられ、あたふたしている俺の耳元で「……かわいい」と熱っぽい声で囁いた千秋さん。
普段の綺麗な透き通る声に、熱が加わり色っぽい声に変貌したその声が耳元で囁かれて、ポーッと一気に体中が熱くなった。
抱きしめていた腕が緩み、ゆっくりと千秋さんの顔が近づき本日3度目、唇にキスされた。
何度も角度を変えながら唇を吸う。
「……んっ」
くぐもった声を合図に、千秋さんの舌が俺の唇を開けて中へと侵入してきた。
厚い舌が俺の舌と絡まる。舌のざらざらした部分が絡み合う、それが気持ちよくて俺も一生懸命、千秋さんの舌に答えるように絡める。
んちゅっ。
そんな水音がやけに響く。
千秋さんの舌は縦横無尽に口内を犯していき、やっと唇が離された。
「はぁはぁはぁ」
やっと空気を取り込めた。
瞳も潤っていて、千秋さんの顔がぼやける。
こんなにも気持ちいいキスは初めての体験で、自分の経験不足のキスがしっかり応えられていたか不安だ。
俺はぼやけた視界で、千秋さんの顔を見詰めた。
そんな俺を先ほどよりますます熱の篭ったギラギラした瞳で見ている。
その瞳にどうしても視線を逸らせない。
こんなにも色気の放った千秋さんは初めて見る。
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