41 / 132

甘い夜のはじまり

 俺なんかよりさらさらした髪。  ちょっと癖っ毛で、跳ねている襟足。  ヘーゼル色の瞳に二重の双眸。綺麗に通った鼻筋。真っ赤な唇。  全てがかっこよくて――― 「――好きっ…」  そう呟いた俺に、箍が外れたようにキスをした千秋さん。  たった数分の間に何度もキスをしている。  でも本当に幸せで、俺は一生懸命その唇に答えた。  ちゅっというリップ音とともに離れた唇は唾液で少し光っている。  その唇でさえもやっぱりセクシーで――。  千秋さんはそのまま俺の鼻のてっぺんに、額に、瞼に、睫毛に、頬に順番にキスを落としていく。  そのキスがあまりにも愛おしく優しくするから、ドキドキする。  睫毛にキスなんて初めてされた。  顔の至る所に優しいキスを落とした千秋さんは、俺の右耳の穴にふうーっと息を吹き込んだ。 「……ひゃあっ」  油断していたところに、いきなり息を吹きかけられたことで、体がびくっと跳ねた。  そんな俺ににやりと笑った千秋さん。  そして耳朶をゆっくり舐めた。 「……んっ」 「…かわいい」  囁いた千秋さんは耳の中に舌を入れてきた。  ぴちゃぴちゃと水音が耳の中から聞こえ、何にも言えずに目を瞑った。  やっと舌が耳から離れたと思えば、次は目尻をぺろっと舐めた。 「……っ」  それにも体がビクッと跳ねた。  そのまままたもや、顔中にキスを降り注ぐ千秋さん。  こんなにも、顔中にキスをされたのは初めてだけど、全然嫌じゃない。  唇にもキスを落とし、ゆっくりと下降していく千秋さんの顔。  首筋、鎖骨、と順番にリップ音を鳴らしながら下降していくのが、恥ずかしい。

ともだちにシェアしよう!