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突然の訪問者

「…初めまして」  俺はその手を恐る恐る握った。  握った俺の手を引っ張り、ソファーへと座らせ、自分も隣に腰掛けた。 「今、朝ご飯作ってるから待っててね」  キッチンでは千秋さんがそう声をかけたが、それに返事をする余裕なんてない。  綺麗な女性が俺の顔をじーっと見ている、その状況に落ち着かない。 「碧くんってなんか可愛いね」  俺の顔を見たままそう呟いた。  女性にかわいいって言われるのは、これで2回目。  西先生にも言われたなー。 「……肌もほんと綺麗。私なんかより遥かに綺麗だわ。毛穴一つない」 「いや…そんなことないと思いますけど……」  毛穴一つない顔なら千秋さんの方が綺麗だと思うし、この人だって化粧はしているけど、絶対元も綺麗な人だと思う。 「――そろそろ碧をからかうのやめてくれない、姉さん」  未だじーっと見られているところに、キッチンから千秋さんが少し声を低くして言った。  その声は、怒っている。  ――え!? 「……姉さん…!?」 「あら、まだ名乗ってなかったわね。私結構有名なんだけどな……」  驚いて隣に座っている女性を凝視した俺に、笑っている。 「高宮彩。職業はモデル。千秋の姉です」 「…モデル」 「そう。結構私人気なのよ~」  パチッと綺麗なウィンクをかました千秋さんのお姉さん、彩さん。  でも言われてみれば、千秋さんと所々似ているかも。 「――全くもう男の嫉妬も怖いものね~」  彩さんはキッチンに立っている千秋さんを可笑しそうに笑って呟いた。 「しかもなんか、猫被ってるし…」  …猫被ってる?千秋さんが?  不思議に思って首を傾げた俺に向かって微笑んだ彩さん。 「碧くん、あの狼には気をつけるんだよ」  俺の手を取って、千秋さんに聞こえない声で囁く。

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