「やっぱり碧くんかわいい～」 　千秋さんの運転する車の中。 　彩さんに無理やり後部座席に隣同士に座らされ、さっきから俺の頬をぷにぷにとネイルの施された指でつつかれている。 「姉さんそろそろやめろよ。碧嫌がってるだろ」 　そんな俺たちの姿をフロントミラーで一瞥した千秋さん。 「いいじゃないの～。碧くんも嫌じゃないでしょ？」 「……まぁ」 　頬をつつくのをやめた彩さんは俯いている俺を覗きこむ。 　結局、俺が撮影現場を見学したいと言ったら、彩さんを送るのを嫌がっていた千秋さんは渋々ながらも了承した。 　何だかんだで、千秋さんは彩さんには敵わないのかも。 　まぁ、お姉さんだしね。 「ねぇ、安全運転なのはいいけど、もう少し急いでよ。間に合わない」 「はぁー。送ってもらといて文句ばっか。もうすぐ着くから」 　言い合いをしている姉弟に、微笑ましく思いクスクスと笑ってしまった。