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モデルの千秋さん
俺、置いて行かれた…。
しかも水野レンと二人っきりで。
すごく気まずい。
「なぁ、お前柏木っていったな」
「はい」
いきなり話しかけてきた水野レン。
じーっと俺の顔を見ている美形な男。
テレビで見ていた人が、近くにいる。
それに少しドキドキする。
「あんたと千秋さんの関係聞こうかと思ったけど、何となくわかったからいいや」
俺を凝視していた水野レンは、やっと俺から視線をはずした。
「俺あんたと友達になりたいんだけど、連絡先交換」
自分のスマホを出した水野レン。
「……はい?」
聞き間違いかな…?
なにゆえ、俺みたいな一般人と友達になりたいんだ?
「早くスマホ!」
「えっ、えっ?あ、はい」
水野レンの勢いに流されて、ズボンのポケットから出してしまったスマホを、無理やり取り上げ、勝手に操作し始めた。
こういう時のために、スマホはロックしとかないといけないんだなー。
俺は面倒くさくて、パスワードも何も設定してなかったことを悔やんだ。
「よし。また連絡する」
勝手に連絡を交換され、俺のスマホを渡した水野レンは、長谷さんの所へと歩いて行った。
長谷さんと喋っている水野レンを見たまま、はぁーっと溜息を吐いた。
「あーおくんっ!」
「……うわっ!」
いきなり彩さんに後ろから抱きしめられ、変な声が出た。
「千秋の準備できたよ~!」
彩さんは抱きしめていた腕を離れ、ジャーンと入口の方向を両手で広げている。
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