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いってらっしゃいのキスは濃厚に

 しゅんとした寂しそうな顔、声音で呟いた千秋さんは子犬みたいで、項垂れている。  その頭には生えていない耳が見える。  かわいいな。  俺は千秋さんの頭に背伸びして腕を伸ばし、犬の頭を撫でるように千秋さんの頭のてっぺんを撫でた。  さらさらした千秋さんの髪が気持ちよくて、夢中になって撫でてしまっていた。  やっぱりきれいな髪だなー。  痛みひとつないミルクティー色の髪。  にやけながら撫でていた俺の手を、いきなり掴んだ千秋さん。  あっ、さすがに頭撫ですぎたかなー。  年下の男に頭に撫でられるって、気分的にあんあまりよくないよな。 「……ごめんなさい。調子に乗って撫で―――」  千秋さんが、俺の言葉ごと奪うようにキスをした。  簡単に侵入した、千秋さんの肉厚の舌が俺の口内を隅々まで撫でてくる。  最後に俺の舌を甘噛みし、軽く吸って離れた。 「……はぁっはぁっ」  不意打ちの濃厚すぎるキスに息が上がる。  そんな俺の姿に、ふふっと笑った千秋さんは、俺の耳元でいつもの声より少し低くなった熱っぽい声で「――いってらっしゃいのキスだよ」と囁いた。  その声が、あの日の夜、ベットの上での声に似ていて、心臓の鼓動がドクッドクッと急激に早くなった。  ―――…  そんな感じで、結局早めに学校に着いても全く頭が回らず、始業式での挨拶もカミカミのぐたぐた挨拶となったしまったわけで…。 「まぁ、柏木先生の挨拶、絶対生徒の印象に残ったはずですよー」  大きなため息とともに、机にうつ伏せた俺に江崎先生が、慰めた。  あんまり、慰めの言葉になってないけど。 「そうですよ~。早速私のクラスで柏木先生、話題になってましたよ!」  いつの間に、職員室にいた西先生が俺たちの会話に入ってきた。

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