70 / 132
お昼は不意打ちキス
「そういえば、碧、朝食べてないもんねー。ほら、食べていいよ」
千秋さんが弁当箱を俺の前に置いた。
「それじゃあ…。いただきます」
「どうぞどうぞ」
俺は卵焼きに箸を伸ばした。
好きな砂糖の入った甘い卵焼き。
やっぱり美味しいなー。
今日の朝のメニューだった、エッグペネディクトも美味しそうだったよな…。
なんか最近流行っている、お洒落な朝食メニュー。
「――また今度、エッグペネディクト作るね」
俺が考えていたことがわかったのか、微笑みながら言った千秋さん。
何で、わかったんだろう…?
首を傾げた俺に笑っている千秋さんは、自分もお弁当から卵焼きを箸でつまみ口に入れた。
「そういえば、卵焼きこの味で大丈夫?」
「えっ?」
「俺、卵焼き甘いほうが好きだからさ」
「俺も甘いほうが好きなので大丈夫です!」
千秋さんと好みが同じって嬉しいなー。
俺は嬉しくて、横に座っている千秋さんを見詰めた。
すると、千秋さんも体ごと俺に向けた視線が重なった。
「――さっきの俺、恐かったでしょ?」
真剣な顔で俺を見た千秋さん。
「…ごめんね。腹たって、どうしても抑えきれなくて……」
じーっと俺の顔を見ていた千秋さんがあからさまに視線を逸らた。
「……確かに…、ちょっと怖かったです――」
そう呟いた俺の声に反応した千秋さん。
「でも、どんな千秋さんでも、千秋さんには変わらないです。だから、俺はどんな千秋さんでもやっぱり好きです」
それに、別に俺に向かってあんな恐い表情を浮かべたわけじゃないし――。
「……ありがとう」
俯いていた顔が、バッと上がり俺の顔を映した千秋さんの綺麗な瞳。
恥ずかしくなり、俺は食べかけの卵焼きを口に入れた。
ともだちにシェアしよう!