72 / 132

通りすがりの女の子の独自

 うわぁ、しゅ…修羅場だ…。  ホームルームが終わり、数学の課題を忘れた私は、数学教師の高宮先生に一言、言わないとと思い、数学教室に来たけど――。  何、あれ!?  高宮先生が男子生徒を、睨んでる…。  高宮先生は、基本、物腰柔らかい、おとぎ話に出てくる王子様のような人。  生徒も怒ったことない。  いつも、綺麗な微笑みを浮かべているような人だ。  そんな高宮先生が、プリントを提出しに来た男子生徒を見たこともない顔で睨んでいる。  そして、高宮先生の横、私が影で隠れている所の近くに、今日から赴任してきた柏木先生が立っている。  私は2年生なので、直接的な関わりはないだろう。  てか、もうなんとなくこの現状を把握できてしまった……。  だって、柏木先生の首筋――。  赤い花がひとつポツンと映えている。  柏木先生は女の私なんかより遥かに肌が白い。  そんな白い肌に、真っ赤な花が目立っている。  この赤い花って、現実では見たことないけど、恋愛小説とかでよく登場するキスマーク、だよね?  えぇー、あんなくっきり赤い痕ができるんだ。  って、そんなことより、このキスマークつけた人って――絶対、高宮先生だよね。  で、目の前の男子生徒が、柏木先生に話しかけたから、嫉妬してあんな恐い顔で睨んでるんだよね。  なんか、すごい。  初めて、BLというものを見てしまった…。  特に、BLには興味なかったけど、私…ちょっと芽生えちゃったかも…。  ぼーっとしていたら、いつの間にか男子生徒はいなくなっていて、ふたりは数学教室へと入るところだった。  高宮先生に、用事あったけどもういいや。  これから、ふたりラブラブするんだよね。  私は邪魔しないでおこう。  そして、帰りに本屋さんに寄って、BL漫画見てみよう…。

ともだちにシェアしよう!