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涙の雨そして親友の優しさ
千秋さんのマンションから歩いて10分のスーパーで、コンソメだけを買って、店を出た。
よし、早く帰って、料理を再開しなければ。
俺はコンソメだけ入った袋を、ぶらぶら揺らしながら足早にマンションへ戻る道程を歩いた。
「……あっ」
数十メートル先の、横断歩道の向こう側に遠目からでもわかる長身でスタイルのいいスーツ姿の男性の姿が見えた。
「……あの人、絶対…」
綺麗なミルクティー色の髪が、陽が落ちて薄暗くなっている外でもきらきら輝いて見える。
黒色のシンプルなスーツでも、あの人が着ればお洒落に見える。
「――千秋さんも今帰りなのかな?じゃあ、一緒に帰ろう」
千秋さんのところへ、すぐにでも近づきたくて走った。
今なら信号も青だから、横断歩道を挟んだ道路にいる千秋さんのところへ行ける。
俺は学生以来、走っていない脚で猛ダッシュした。
パカパカ点滅を始めた信号。
やばい、渡れないかも……。
今よりもっと早く走る。
………って、あれ…。
「千秋さんひとりじゃない…?」
千秋さんで見えなかったが、近づいたことで千秋さんと向かい合って何か話している、人影が見えた。
千秋さんより20センチぐらい低い身長に、腰までの長さの黒髪。
白いワンピース姿の――。
「……女性」
俺は走っていた脚を止め、ぼーっと千秋さんと親しげに話している女性の姿を見た。
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