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涙の雨そして親友の優しさ
「おい、碧。大丈夫か?」
「………比呂?」
倒れる俺を支えた人は比呂で。停まっている車の横に立っている。
「何でこんなところで、しゃがみこんでたんだ?」
俺の視界に心配そうな顔をしている比呂の顔。
「しかも、雨の中」
「……雨?」
俺の頭上から水滴は降ってきていない。
「そりゃあ、今俺が傘さしてるからな」
比呂の言葉に、俺は上を見上げた。
ビニール傘にザーっと雨が落ちている。
「結構な大雨なのに、お前何してんだよ。服もめっちゃ濡れてるし、いつからそこにいるんだ」
怒っているのか、語気を荒げてる。
そのまま、俺の手を取り、横に停めていた車の後部座席に俺を乗せた。
「とりあえず、俺の家行くぞ」
運転席に乗り込んだ比呂。
車が比呂の家へ向けて走り出した。
比呂の家は、普通の1DKのマンション。
鍵を開けて、俺を家へと入れた。
「とりあえず、シャワー浴びろ。夏とはいえ、その状態じゃ風邪引く」
俺を脱衣所に連れてきた比呂は、バスタオルと自分のスウェットを棚に置き出て行った。
比呂の厚意に甘え、シャワーを浴び、俺には大きめのグレーのスウェットを着た。
髪は濡れたままなので、バスタオルで拭きながら比呂のいる部屋の扉を開けた。
「えーと。風呂ありがとう」
キッチンで作業している比呂にお礼を言った。
「気にすんな。それよりお前、まだ夜食ってねーだろ?」
そう言い、ラーメン丼を二つをダイニングテーブルに置いた。
「インスタントだけど、食うぞ」
食欲はなかったけど、せっかく比呂が用意してくれたので、俺は「うん」と頷いた。
「ちゃんとお前の好きな塩ラーメンだからな」
「じゃあ、比呂も塩ラーメンなのか?」
「はぁ?何言ってんだよ、俺はラーメンは味噌しか食わねぇーの」
そうだった。
大学の頃、ふたりでラーメンをよく食べに行ったが、比呂は必ず味噌しか食べなかった。
大学の頃が懐かしく思い、ふっと笑った俺は比呂が作ってくれたインスタントの塩ラーメンを食べた。
「……やっと笑ったな」
そんな俺をみた比呂は味噌ラーメンを啜った。
無言でラーメンを食べ終わり、食器は俺が洗った。
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