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真中比呂の失恋

   真中比呂side  何故か最近付き纏われている生徒から、「経済とか地理とか教えて」と頼まれ、毎日放課後、課外をしている。  通常、放課後の課外は18時まで。  だが、時間を気にしていなかった俺は、教えるのに熱が入ってしまい、19時まで課外をしてしまっていた。  そんな時間までやってしまった俺は、罪悪感を感じ、そいつの家まで送ることにした。  ほんとは、生徒を教師の車に乗せることもいけないが。  今回だけだ。  そいつを送り、家へ帰ろうとしていた俺は、歩道にしゃがみこんでいる男性が視界に入った。  雨が降り出した空。一気に雨足は早くなり、大雨だ。  そんな中、傘も差さず道路にしゃがみこんでいる。  通行人はそいつを訝しげにみて、そのまま通り過ぎている。  もしかしたら、具合が悪くなってしゃがみこんでいるのでは…?  俺は心配になり、そいつの近くに車を停めた。  ――碧…?  近くに停めたことでわかった、しゃがみこんでいる人物。  顔は見えないが、碧だ。  俺は車のクラクションを鳴らし、積んでいたビニール傘を手に取り車から降りた。  今まで固まったようにしゃがみこんでいた碧は、慌てたように立ち上がった。  あぁー、そんな勢いよく立ち上がったら…。  案の定、立ち眩みでふらふらしている碧。  そのまま前に倒れる…。  俺は斜め後ろから、千秋の腹に腕をいれ前に倒れるのを阻止する。  そのとき、やっと碧の顔が見えたが、雨で濡れた顔に混じって双眸には、涙が溜まっている。  ……泣いてたのか?  俺はじっと涙の溜まった瞳を見詰めた。  俺が支えたことで、倒れずにすんだ碧は腹に回っている俺の腕を不思議そうに見ている。  瞬きを何回もしている碧。  溜まっていた涙がすーっと頬に流れていく。  その姿が綺麗でぼーっと見詰めていた。  碧と初めて出会ったのは大学の頃。  初めての講義で、同じ講義だった俺たち。  席が近かった俺と碧は、何となく話し出し、何となく一緒にいるのが当たり前になった。  元々、俺は友達と一緒につるむということが苦手。  というか面倒くさいので、いつもひとりで行動をしていた。  だが、碧とは不思議と一緒にいても鬱陶しく感じず、碧が近くにいるのが当たり前になった。  何だかんだで大学生になると、みんなサボっていたりするのに、自分の取っている講義は絶対に欠席せず、真剣にノートに講師の言ったことを書き込んでいる碧の真面目な性格が好きだ。  こんな人が教師になれば、生徒たちも幸せだろうな。  そんな真面目な性格の碧のことをいつの間にか恋愛として好きになっていた。  自分が男を好きになることに驚いた。  でも、男というより、碧だから好きになったのかもしれない。

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