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千秋と比呂

   真中比呂side  *  次の日。  なかなか起きてこない碧に不思議に思い、寝室に行ってみると、真っ赤な顔で寝てる碧。  俺はすぐさま、家にあった熱さまシートを碧の額に貼った。  熱が高かったら、病院連れて行ったほうがいいよな…。  俺はベットの横に置いている棚の引き出しから、体温計を取り出した。 「……んんっ…ひろ?」  引き出しを開ける音で目が覚めたのか、潤んだ瞳が俺を映している。 「お前、案の定、熱出てる。とりあえず、これ」  俺はその視線から逸らし、体温計を碧に渡し、ついこの前、安売りでたまたま買った500mlのスポーツドリンクを冷蔵庫から取りに行った。 「……はい、ひろ」  碧は脇に挟んでいた体温計を俺に渡したので、俺もスポーツドリンクを渡した。  38度か。  もしかしたら、これから上がってくるかもな。 「やっぱ病院行くか」 「え、いいよ…。ひろ、仕事…」 「風邪って言って休むから」  俺はスマホで近くの病院を検索した。 「……だめだっ…。ズル休みは…。俺のことはいいから…っ」  喉が痛いのか、苦しげな表情で咳をした碧。  碧のこういう真面目なところが好きだけど…。 「はぁー。じゃあ具合悪くなったら俺のスマホに連絡しろ。昼また様子見に帰ってくる」  結局、俺は折れて仕事に行く準備を始める。 「……うん」  碧は俺に笑顔を浮かべ、布団を頭まで被った。  そうだ、着替えも準備してたほうがいいか。  俺はクローゼットから、着替えを取り出し『着替えだ。起きたら着替えること』とメモ書きを残した。  そのメモ書きをベットの横の棚に置いた。  そこには、碧のスマホも置いてある。  電源を切っているのか、画面は真っ暗なまま。  ――高宮千秋。  あいつに一言言ったほうがいいだろうか。  いや、別に、風邪で休む連絡を俺がしなくても、碧がするか。  でも……。  俺は碧のスマホの電源を入れ、何件も掛かってきている着信の番号を俺のスマホにメモした。  碧が熱が出た原因は、こいつにもあるんだ、一言言ってやろう。  俺は車の中で、さっきメモした電話番号に電話をかける。  プルプルと何度か呼び出し音が鳴り、『はい』と出た男。  あの時、聞いた声だ。 「――高宮千秋さんですか」 『そうですけど。どちら様?』  イライラしているのか、声はあの時聞いた声だが、ぶすっとしている。  所々、敬語じゃなくなっている。 「俺、碧の親友の真中比呂です」 『…………碧の?』 「はい。今碧は俺の家にいます。詳しいことは会って話したいんですけど」 『わかりました。何処に行けばいいですか?』  動揺しながらもそう返事した男。  俺は家の近くのファミレスで待ち合わせした。

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