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誤解と真実

「といっても勝手に親同士で決めて、お互いを婚約者としていたんだけど…。まぁ、悠花とは小さい頃からの仲で、親が勝手に婚約者って言ってただけで――」 「悠花さんは…千秋さんの彼女さんじゃないんですね」  俺は千秋さんの説明を遮るように聞いた。 「うん。悠花はただの幼馴染」  もう一度、そうはっきりと言った千秋さん。  …なんだ。  ただの俺の勘違い。  でも、ふたりのあんな仲良さそうな姿みたら勘違いしちゃうよ。  カップルのイチャイチャに見えたし…。 「……悠花さんも…頬染めてたような…」  ふと呟いてしまった言葉に、千秋さんが首を傾げてる。  そして、何か思い出したように、「あぁ~」と言った千秋さん。 「悠花が頬染めてたのは、悠花の好きな人の話をしてたからかな」 「なるほど…」 「……でも俺がちゃんと事前に言っとけば碧が無駄な心配せずにすんだだよな…」  また、しゅんと項垂れた千秋さん。  俺はその姿が可愛くて、ぼーっと見詰めていた。 「よしっ。この際だから、碧に俺のこと全部伝える」  思いっきり顔を上げた千秋さんの顔は、先程までの悲しそうな顔から一変して何か決心したような顔だ。  今から千秋さんの口から何を言われるんだろうか。  今まで優しくしてたけど、別に碧のこと好きじゃないから。とか自惚れるなよ。とかネガティブな言葉ばかりが頭に思い浮かんでしまう。 「ふふっ。そんな不安そうな顔しなくても」  千秋さんは優しく微笑み、俺の目尻を人差し指で優しく撫でた。 「うーん。何からぶっちゃけようかなー」  千秋さんはうーん、うーん。と言い悩んでいる。  そして、ふぅ。と一つ息を吐いた千秋さん。 「―――実は俺……ゲイなんだよね」 「……えっ」  ゲイって……、男性が好き。ってことだよね? 「だから、俺が女性といても、俺は絶対女性は好きにならないから」  爽やかな微笑みを浮かべている千秋さん。  別に、そういうのには偏見はないけど…。  というか、俺も千秋さんが好きだし…。 「そして、もう一つのカミングアウト」  千秋さんは人差し指を立てて、1の数字を作った。 「俺と碧、3年前にも会ってるんだ。てか、3年前からずっと碧のことが好き」  今の言葉は聞き間違い…? 「まぁ、きっと3年前のことは碧、覚えてないと思うけど…」  また悲しそうな顔になった千秋さん。  ふっ。と乾いた笑いを浮かべた。

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