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恋人同士の梅粥
千秋さんが土鍋が乗ったお盆を両手に持って戻ってきた。
「普通の梅干し粥だけど…。梅干しは食べられる?」
「はい食べれます」
「よかった」
千秋さんベットの横のローテーブルにお盆を置き、土鍋の蓋を開けお皿に取り分けた。
さっきまで、そんなにお腹すいてなかったけど、お粥の美味しそうな匂いを嗅いだらグウーとなったお腹。
そういえば、昨日の夜、比呂の家でラーメン食べてから、何も食べてないから、丸1日何も食べてないんだ。
「碧、はい。あーん」
俺の口に一口分のお粥を掬ったレンゲを持ってきた千秋さん。
「…えっ?」
「あーん」
口を開けろといわんばかりに、レンゲを近づけてくる。
「ちゃんと、フーフーしたよ」
熱くて口を開けられないと思ったのか、そう付け足した千秋さん。
いやいや。
そんなまるで、恋人みたいな―――。
ドラマとかでよくある、恋人の看病にお粥を食べさせる。というシチュエーション。
「あの…俺、自分で食べれます…」
ドラマでは結構平気でやってるけど、かなり恥ずかしい。
好きな人の前に口を開けないといけないだから。
「ううん。あーん」
そんな俺の言葉に千秋さんは首を横に振った。
意地でも、あーんさせたいみたいだ…。
「ほら早く」
俺は千秋さんを極力見ずに、渋々口を開けてお粥を食べた。
「美味しい?」
にこにこ笑顔の千秋さんに俺は頷いた。
「よかった。たくさん食べてね」
そう言いながら、また一口分をレンゲに掬った千秋さんを、俺の口に持ってきた。
え、また?
一回すれば、気が済むかなーって思ったんだけど…。
千秋さんの顔をチラッと見たが、笑顔のまま。
仕方なくもう一度、口を開けお粥を食べた。
千秋さんは嬉しそうに、俺にお粥を全部食べさせ、「熱は下がってるけど、念の為に」と薬と水を渡してきた。
それを飲んだ俺を見て千秋さんは微笑み、唇にチュッとキスをした。
あまりに不意打ち過ぎて、唖然としていた俺に「ほら、薬飲んだし寝て寝て」と俺を寝かせ、布団を被せた千秋さん。
「おやすみ」
そう言った千秋さんは、親が子どもを寝かしつけるように俺の胸元を優しくトントンと叩いてる。
その規則的なリズムに自然と落ち着いてきた俺は、いつの間にか眠ってしまっていた。
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