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甘い甘いひととき
うーん。よく寝た。
カーテンの隙間から漏れる朝日で目が覚めた。
久しぶりにこんなにも寝たなー。
俺は体を起こして伸びをしようとしたが、右手を誰かに握られているのでそちらに視線を向けた。
「あっ!」
ベットの横に地べたで座って寝ている千秋さん。
俺の右手を握っている。
もしかして、昨日の夜からずっとここで?
こんなところで寝たら、逆に千秋さんが風邪引くよ…
とりあえず、何か掛けよう。
夏とはいえ、朝は涼しいし。
俺は握られてる右手をゆっくりと退かし、体を起こす。
「……碧?」
体を起こしたことで、うつ伏せてた千秋さんの腕が動いてしまったので、目が覚めてしまったみたいだ。
「おはよう。具合はどう?」
顔を上げ、俺に額に手を当てた千秋さん。
「うん。熱は下がってるね」
「…千秋さん…昨夜ずっとここで寝てたんですか?」
腕を上にあげて伸ばしながら、首を回してる千秋さん。
「…まぁ…」
「こんなところで寝てたら風邪ひいちゃいますよ。ベット占領してた俺が言うのもなんですが…」
「大丈夫だよ。俺、意外に体強いから」
笑顔で握りこぶしを作った千秋さん。
「それより、碧、汗とかたくさんかいたし、シャワー浴びてきな」
「あ、はい」
確かに、汗で気持ち悪い…
「それじゃあ、シャワー浴びてきます」
俺はベットから降りようと布団を捲ろうとした――が、千秋さんに腕を握られた。
「どうしたんですか?」
起き上がった状態…ベットに座っている俺は、ベットの下に座っている千秋さんを見た。
「まだ、挨拶してなかったと思って――」
「…挨拶?」
挨拶なら、さっき千秋さん「おはよう」って俺に言ってくれたような……。
「あっ」
そういえば、俺、おはようと返してなかった…。
なるほど、それで、あんなことを言ったのか。
俺は千秋さんの言いたいことを理解し、「おはようございます」と挨拶しようと千秋さんの目をまっすぐ見た。
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