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少しの不安と可愛い嫉妬
「………えっ、あ、そうなんですか?」
「どうしたの?やっぱりまだ具合悪い?」
そんな俺にすぐさま気がついた千秋さんが眉尻を下げて心配そうに見ている。
「大丈夫です!熱も全然ないです!」
俺は笑顔をはりつけて、首を思いっきり横に振った。
千秋さんの昔の恋人に勝手に嫉妬していたなんて言えるわけない。
千秋さんは俺の笑顔に安心したのか、テレビに視線を向けた。
「ちょうど、この話レンが主役の回だ」
嬉しそうに言った千秋さん。
ドラマでは水野レンが、空港で女優を後ろから抱きしめてるシーン。
「…やっぱり、レン演技うまいよなー」
そう独り言のように呟いた千秋さんは、じっとテレビの中の水野レンを見詰めている。
もしかして――。
千秋さん……水野レンのことが好きだった…?
同じモデルの職で一緒に仕事をすることも多かっただろうし、それに千秋さんの水野レンを見つめる瞳があまりにも真剣で……。
俺は千秋さんの横顔をじっと見つめた。
食い入るようにテレビを見ている。
確かに、水野レンはモデル、俳優で大活躍してるだけあって、かなり容姿は整っている。
千秋さんとも釣り合うぐらいに……
俺なんて何もかも普通の平凡だし。
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