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少しの不安と可愛い嫉妬
「……うん?」
じっと見詰めていた俺の視線に気がついたのか、此方を見た千秋さん。
首を傾げている。
その姿すらもやっぱりかっこいい。
「ドラマつまんなかった?」
そう聞いた千秋さんの声に混じって、ドラマの中で水野レンの告白の声が聞こえてくる。
「……いえ…水野レンかっこいい人だと思って……」
俺なんかよりも断然、千秋さんとお似合い、だよな…。
はぁっとため息を吐いた。
……んっ?
俺は自分の容姿の平凡さに辟易していたが、一向に千秋さんからのリアクションがないことに不思議に思い、俯いていた顔を上げ、千秋さんの方に体ごと向ける。
「……えっ??」
千秋さんは、眉をしかめた顔で此方をじっと瞬きもせず見ている。
その顔があまりにも剣呑な表情で……見たこともない顔。
そのまま緩慢な動きで俺の手を取った千秋さん。
俺はそんな千秋さんから視線を逸らせずにいた。
「……俺とレンどっちがかっこいい?」
低い声で聞いてきた。
「……えっ?」
言い回しは優しいが、低い声で聞いてきた千秋さん。
確かに、水野レンも芸能人なだけあってかっこいいが、性格が…ね
俺は前会った時の水野レンを思い出した。
俺様で傲慢なイメージだ。
「……そんなのっ、千秋さんの方が断然かっこいいです。顔もですけど、性格もほんと優しくて好きです…!」
俺は千秋さんの顔を真っ直ぐ見詰めた。
千秋さんは先程の剣呑な雰囲気が嘘のように優しく、でも少し憂いを含んだ微笑みを浮かべた。
「………なんか俺、かっこ悪……」
小さな声でそう呟いた千秋さんは、自分の額に手を当てた。
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