104 / 132

少しの不安と可愛い嫉妬

 綺麗な前髪をくしゃっと掴んでいる。 「あの…千秋さん…?」  項垂れている千秋さんのつむじが見えている。  俺はゆっくり腕を伸ばし千秋さんの頭に手を乗せた。  いつも千秋さんに撫でられるように、俺も千秋さんの頭を優しく撫でた。  さらさらなミルクティー色の髪が気持ちいい。 「……レンに嫉妬してる自分がかっこ悪い……」  小さい声でそう呟いた千秋さんは、頭を撫でていた俺の手を握った。  そんな千秋さんがあまりにも辛そうな表情をしているので、俺は思わず自分がさっきまで考えていたこと――千秋さんの昔の恋人の存在、もしかして、水野レンのこと好きだったんじゃないか…。  全部口に出していた。  驚いたように目を見開いた千秋さん。  だが、すぐ優しくて甘い微笑みを浮かべた。  うわぁ……結局全部話しちゃったし…  千秋さんなんかより、俺のほうが断然かっこ悪いよ…。 「…やばい…碧、かわいい…」  片手で俺の手を握ったまま、もうひとつの手は俺の頬を優しく撫でる。  その優しい手つきがこぞばゆくて、身体が少し震える。 「レンのことは好きじゃないよ。てか、ぶっちゃけレンのことタイプじゃないし」  そう言い切った千秋さんは意地悪そうに笑って、何度も頬を優しく撫でる。 「それと前も言ったけど俺の初恋は、碧だから。まぁ体だけの関係とかはあったけど……」 「…え…?」  そうだよ。あんなにエッチ上手な人が、童貞なわけないし…そんなにわかってるけど、やっぱりちょっと辛い… 「でも体だけ。碧とヤったみたいに、愛撫なんてしないし。気遣いもしないし、ただ挿れるだけ」  そう言いながら、頬を撫でていた手をそのまま下げて首筋を長い指でツーっと撫でる。

ともだちにシェアしよう!