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花火大会りんご飴の情欲
「―――高宮先生っ!…と柏木先生…?」
恥ずかしそうにしている碧を見詰めていた俺は、声のする方を振り向いた。
碧も慌てたようにそちらに顔を向けた。
早歩きでこちらに近づいてくる人物。
「……遠藤…くん?」
その人物にいち早く気づいた碧が小さな声で呟く。
紀陵からは遠いのに、まさか遠藤が此処に来ていたとは…
「高宮先生たちも来てたんですねー!」
あっという間に此方に来た遠藤は何故か嬉しそうだ。
「…遠藤くんも来てたんですね」
俺は普段の学校での言葉使いに気をつけながら、にこにこ笑っている遠藤に問いかけた。
「塾の友達と来たんですよー」
そう言い、後ろにいる男集団の方を指差した。
見たところ、紀陵の生徒はいないようだ。
とりあえずよかった。
「そうなんですね。それでは、早く彼らの所に戻ったほうがいいんじゃないですか?」
「まぁそうですね…。でもふたり、ほんとラブラブですね」
「はい?」
「……いや実は俺、柏木先生のこと好きだったんですよ。でも高宮先生には敵わないので、俺諦めます」
俺の耳元でそう囁いた遠藤は、「それでは」と碧に一礼し、一緒にいた男集団の元へと戻っていった。
遠藤が碧に気があることは、何となく分かっていたけど。
「遠藤くんさっき何言ってたんですか?」
不思議そうな顔をしている碧。
「いや。何でもないよ。ただ、夏休みの宿題少なくしてくださいねって」
俺は適当に誤魔化した。
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