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第4話
「ちょっと食べるものとか買ってくるわ」
フリーマーケットが始まって1時間が過ぎたところで、甘利は座り込んでいた絨毯から立ち上がった。このフリーマーケットは誰でも出店できるエリアと事前申請をして珍品や高額商品を扱えるエリア、飲食物を売るエリアの3つのエリアがあるらしい。
そして、その中でも甘利の出す店は珍品や高額商品を扱うエリアでも人通りの少ない場所だった。
開始されてしまう前は品定めや無銭で商品を持っていこうと、人の通りも多かったのだが、今の時間は飲食物を扱うエリアを始め、他の店に集中しているらしい。しかも、12時が近づいてくると、
「どこの飲食店やドリンク屋も完売状態になってくるのだよ!」
とのことで、甘利は人差し指を1本立てて、ポーズをとると、そそくさとサンダルを履いた。
「まきまきは何か、希望ある? 今日はまきまきが好きそうなクレープとか美味しいって評判のおにぎりセットとかがあったみたいだけど。ちなみに、俺はおにぎりセットとクレープ、どっちも買う予定~」
「え、じゃあ、おにぎりセットと何か飲むものがあると嬉しいです」
「オッケー、オッケー。じゃあ、行ってきます!」
ヒラヒラと降旗へ手を振り、甘利は飲食物を扱うエリアの方へ消えていく。朱色が多めの7色のタイダイ染めのTシャツと臙脂のストールは後ろからも目立っていて、甘利が本当に見えなくなるまで存在を主張していた。
「なってくるのだよって何キャラだよ……ほんと、分からない人……」
降旗はトランクへ無造作に詰められたバンダナを拾い上げると、畳んで、色別にしてしまいそうになるのを抑えた。ある程度には色なり模様なり布地なりを揃えた方が選びやすくなると、降旗は思うのだが、わざと揃えないことで、他の商品も手にとって見てもらうという工夫らしい。
それに、店員に勧められたのではなく、自分自身で良いものを思いがけなく見つけた。
そんな感覚はかけがえがなくて、間違いなく、フリマの醍醐味だという。
「でも、良いところはあるのでしょう?」
降旗が愚痴っているところへふいに声がした。
その声は甘利でもなく、降旗でもなかった。
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