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第6話
「そう言えば、降旗様はどちらの大学に行かれているのですか?」
「え、俺ですか?」
「ええ、差し支えなければ」
「そこの生大です、生和(せいわ)大学」
「あぁ、そうなんですね。私もお得様のお宅に伺う時にタクシーで通りますが、いちょう並木が本当に美しいですよね」
多分、蓬莱は自身の店でもある長月堂でも何らかの会話をして、お客との距離を詰めていくのだろう。
好き勝手に喋る甘利だったら、色々喋らせておいて、相槌を打って……という感じに。そうではなく、降旗のように会話が切れてしまうタイプはどんどん質問をしていって、距離を近づけていく。
名前は降旗万貴。誕生日は1999年2月20日。年は18歳。血液型はО型。身長は187センチで、体重は65~75キロをうろうろしている。好きなのはパフェ屋巡りと断捨離すること。嫌い、というより嫌なのは面倒なことと理解できないこと。家族は父と母と兄。それに、双子の妹が2人。現在は生和大学の1回生で、理工学部生……
どこかで道草を食っているのか、甘利がなかなか帰ってこなくて、降旗は蓬莱の質問に1つ、また1つと答えていき、多くのことを話していた。
「成程。聞けば聞くほど、貴方に興味が出てきましたよ」
「そ、そんな……」
「いえいえ、私は学こそありませんが、目は少しばかり良いと思っているんです。もし、貴方を売っていただけるのなら、ご店主の言い値で買いたいくらいですよ」
蓬莱は学がないという割には、また知的で品の良い笑みを浮かべ、辺りには下駄がからりと転がるような心地の良い声が響く。降旗は世辞か、本気か分からない蓬莱の言葉に居心地の悪さを感じてしまった。
確かに、身長は高い部類で、やや痩せ気味ではあるが、顔立ちもそこそこではある。しかし、学校の成績は並。性格はめんどくさがり屋なのに、割と細かいところが気になることもある。家族の中でも、一流の私大である明慈大学へ通う1つ上の兄と愛らしい容姿を持ち、小学生モデルをしている妹達と比べると、やや陰も薄く面白みに欠ける人間だと降旗自身は思っていた。
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