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第7話
すると、蓬莱はそんな降旗の様子を察して、美しく整った眉をやや顰めるように曲げた。
「おや、理解ができないってお顔ですね」
蓬莱は「少々、お待ちを」と言い、自身の店へ向かう。それから数秒もしないうちに、掌に収まる程の小ささの木箱3つ、持って帰ってきた。
「こちらは上から桐の箱、檜の箱、杉の箱でございます。3箱ともほぼ同じ大きさで、そして、これらには緑の石が1顆ずつ入っております。降旗様はどれが1番価値があるように思いますか?」
蓬莱は絨毯の上へ3つの木箱を並べると、「ご自由にお手にとってみてください」と微笑む。桐の箱には透き通った石が、檜の箱には白く濁った石が入っている。それに対して、杉の箱には透き通っている部分も、白く濁っている部分もあり、表面が少しぼこぼこしている石が入っていた。
だが、宝石の知識がない降旗には全く分からなかった。
「もしかして、石よりも箱の方が価値があるとか?」
降旗は悩んだ末にそんなことを言ってみた。木材の知識もない降旗だが、桐や檜は高級な木材であるということくらいは知っている。また、杉も1万円くらいする箱もあり、降旗はそんなに高いのかとかなり驚いた記憶もあった。それに、蓬莱は『どの石が1番価値があるか』とは言わなかった。
宝石は確かに高価ではあるだろうが、それはイミテーションではなく、本物だった場合だ。
「成程。引っ掛けるつもりはなかったのですが、確かに箱の方に価値を見出す方はいらっしゃるかも知れませんね」
蓬莱は笑みを崩さないで口にする。
あくまで石そのもので1番価値があるものは、ということなのだろうか。降旗が悩んでいると、蓬莱は「では」と言った。
「貴方はどの石がお好きでしょう?」
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