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 ハロウィン前の土曜日、直倫は相変わらず部活だった。  今日は午前中だけ授業ですぐに始まった部活動は、軽い柔軟の後にロードランニングからスタートだった。駅前の商店街を経由して川沿いの長い遊歩道、そして学校に戻るというコースを40分以内に走るというメニュー。 部内で俊足を誇る直倫は2年生エースの松田(マツダ)と並ぶペースで走っていた。 「いらっしゃいませー」 「川浜庵(かわはまあん)ハロウィン限定カボチャ和スイーツはいかがですかー」  商店街の入り口にある和菓子屋の店頭販売。やっすいドラキュラと魔法使いのコスプレをした凸凹な2人組が棒読みで声を出していた。 「……大竹と宮西(みやにし)⁉︎」 「え……」  まさかの知り合いだった松田はその場で駆け足しながら立ち止まった。  直倫も同様で驚きつつその場に留まった。 「ぶっ、な、なにその百均クオリティ!くっそ笑えるんですけどー」 「あ?やりたくてやってるわけじゃねーんだよ」 「何でか俺まで道連れなんだよ」  ドラキュラは松田の幼馴染の宮西(みやにし)椋丞(リョースケ)で、魔法使いは裕也だった。  ノーメイクで100円ショップで売ってるチープな衣装を着せられているだけのお粗末なコスプレで目は死んでいた。  松田は爆笑を堪えて揶揄(からか)う。 「朝から椋丞のかーちゃんにコレ渡されて脅されて…わかるだろ?」 「ぶっ、くくくく…お、お勤めご苦労様でぇす」 「お前マジで覚えとけよ」 「……げっ!直倫⁉︎」  裕也はやっと後ろにいた直倫の存在に気がつくと、一気に恥ずかしくなって顔を真っ赤にした。 「み、見んなよ!は、恥ずかしい!」 「あ……えっと……すいません……」 「早く戻ってグループ通信でクラスの連中に知らせるわ…ぶっ」 「殺すぞ」  宮西から途轍もない殺気を感じたところで松田はスタコラと退散した。  直倫は裕也に近づくと、裕也の腕を引っ張って耳元で囁く。 「お仕事終わったら、俺の家にきてください」 「……は?」 直倫は女性なら誰もが落ちそうな笑顔を裕也に向けると松田に続いて走り去っていった。 「大竹、顔真っ赤」 「う、うるせーよ!」

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