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 バイトを終えて着ていた安い衣装と余った和菓子を大量に貰って裕也は直倫が一人暮らしをしているマンションに向かった。 (何だアイツ、最近俺も忙しいからって遠慮して全然会わなかったくせに…それと悪寒がするのは気のせいか?)  すっかり覚えた直倫の部屋番号を入れてインターホンを鳴らすと自動ドアが開いた。  相変わらず豪華なエントランスを通過して高速エレベーターに乗り、あっという間に最上階に辿り着いた。  そして角部屋のインターホンを鳴らすと、バタバタと音がしてドアがゆっくり開いた。 「よぉ、来てやったぞ」 「お仕事お疲れ様です、どうぞ」 「お、おう」  いつも通りに直倫がドアを開けてくれて裕也が無遠慮に部屋に上がって、相変わらず無駄に広いリビングの大きなソファにどっかりと腰をおろして、スマホを取り出してダラダラとする。 (いつも通りじゃん。なーんか嫌な予感したんだけど、気のせいだな) 警戒と緊張がバカバカしくなった裕也はいつも通りに寛ぐことにした。 「直倫ぃ、何か飲みモンもらっていいか?」 「どうぞ」  裕也は我が家のように冷蔵庫を物色した。相変わらずドリンクホルダーには炭酸水や牛乳しかなかった。 「コーラ…買ってくりゃよかったな」  レモンフレーバーの炭酸水のペットボトルを選んでそれを開封して飲みながら再びソファに腰をおろした。 (というか直倫何してんだ?寝室とか洗面所に行ったり来たりして…ま、関係ねぇや) 「直倫、何か用事あったんじゃねーの?俺疲れてっからとっとと帰りてぇんだけ…」  裕也は直倫がいるであろう方向を見ると、Tシャツとジャージを着た直倫が両手に何かを持って裕也の方に近づいていた。  左手には開封済みの見たことのあるボトルとキンキラキンの小箱、右手にはバスタオル。 「………………帰る」

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