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第3話
「なあ、いーだろ?頼むよ、別に仮装パーティーにどうしても行きたい訳じゃないし」
「そりゃ、そうだけど」
両手を合わせて拝み倒す牧田の後頭部を見下ろしながら眉根を寄せているが、譲は内心喜んでいた。
10月31日、十数年ぶりに満月のハロウィーンとなるその日、牧田は部屋で棚を作りたいから手伝ってほしいと懇願していた。その後お礼に晩御飯を振る舞うという。
コスプレして街に繰り出したりパーティーをするのを楽しみにしてる学生達であふれるそんな日に、何を思って棚を作るのか。
いろいろ突っ込みたい事はあったが、我慢していた。いや、突っ込みたいのは意味不明の思考回路に対してではなく、むしろもっと物理的に突っ込みたいものがある。
首筋や手の甲に浮き出る太い張りのある血管がいつも譲の欲情を誘っていた。
頸動脈に歯を立てながら組み伏せて、この犬のように困った顔をしている相手を快感の奈落へ突き落したい。
見たこともないお化けを怖がる彼が友人と思っている自分に犯された時どんな声で啼くのか聞いてみたい。
噛みつき、欲望を捻じ込みながら唾液と体液を交わし合い、自分に服従させ支配したいのだ。
合コンでテーブルのはす向かいに座ってからずっと、譲の腹の奥底にそんな欲求が生まれていた。
譲は、控えめに言っても嗜虐心に溢れる男だった。
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