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第4話
骨太な骨格にしっかりと筋肉を纏い、分かりやすく男らしい体格に可愛げのある甘い顔。
そんな恵まれた外見にもかかわらず牧田は交際相手と長く続く事が無かった。臆病な性格と見た目のギャップであったり、家に遊びに行ったら飼い犬が異様に吠え立てて入れなかったりと原因は様々だ。
大学に入ったら合コンでさっさと彼女を見つけて今度こそチェリーを卒業しようと頑張ってみたのだけれど、ホラー映画に連れていかれて途中で映画館から一人で退場したことがある。
お家デートでいい雰囲気だったのに、ゾンビの出るゲームをさせられて気絶したり、ペットショップで店中の動物から威嚇されては振られてきたのだった。
「見た目は好みだけど、男なんだからちゃんとして」、「ガタイがいい分そんなヘタレだと余計にウザイ」。女たちからのコメントは辛辣だった。
究極は、アミューズメントパークのお化け屋敷に誘われ、土下座する勢いで別のアトラクションへの変更を頼みこんだら「お化け屋敷が怖いなんて人間としてありえないし、デートと、デートの準備に費やした時間を損した」と酷いことを言われてその場で別れた。
怖いものが多すぎてデートのエスコートさえままならない。
そんな中でなぜかモデルのようなイケメンと仲良くなった。それが理学部の同じ学年の譲だった。
いつもおたおたする牧田に嫌な顔一つ見せずに付き合ってくれる。本屋で恐ろしい表紙の本があればさり気なく反対側に誘導してくれる。
つるんでいる内にいつの間にか居心地がよくなり、空きコマが合えば一緒に過ごすようになっていた。
やさしいし、いいやつなんだけど、やたらと人の血管に触れるのが謎だった。時々場所もわきまえずうっとりした顔で牧田の手首や手の甲にキスをしてくる。
クォーターだか何だかで、高身長にモデルの様な見かけだから様にはなっているが注目を集めるのが恥ずかしかった。
しかし本人は無意識にやっているようなので止めろと言うことも躊躇われる。
献血ルームの受付バイトで他の人にも同じことしてるのだろうか?
血管の透ける様な皮膚の薄い女の首に唇を寄せている所を想像すると、何故か胸の辺りがうずうずして、訳もなく譲をむちゃくちゃにしてやりたいと思うようになっていた。
しかし牧田は童貞で、何をどうしていいのか分かっていないし、怖いものが多すぎて譲に逆らう事はなかった。今のところは。
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