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第3話
寝間着と下着を手に、バスルームへと向かう。
熱めのシャワーを頭から被り、冷えた身体を温めていく間、圭一郎は翌日の仕事の段取りについて考えた。部下に指示した案件について確認し、上司から頼まれた例の件について報告し、それから……――
大量のシャワーの粒が続々とと髪や肌に当たり、ずくずくに濡らしていく中、圭一郎の頭の中もまた、考え事があれこれと降ってきて溜まっていく。気持ちが重苦しくなり、足下の排水口にため息を落とす。
……これで、何とかなるのだろうか。まぁ、ならなかった時はまた考え直す他ないのだが。けれども……。
眉間に縦皺を作りながら両手で顔を覆い、滴るお湯を拭うが、そんなことをしても無駄だと言わんばかりに肌はまたすぐに濡れていく。
オンとオフの切り替えは得意な方だと思っていた。
が、中間管理職に昇進してからというもの、プライベートの時間にも仕事について頭を悩ませることが増えてしまった。
リョウといる時は考えないようにしているが、こうしてひとりの時間ができると、ついつい思考がそちらへと引っ張られてしまい、嫌になる。
ひどい時は眠れない。頭が妙に冴えてしまい、あれこれと案件や問題が浮かんできて、いつまでもそこに居座り、気になってしまう。そして朝、寝不足でぼうっとしている自分を見て、リョウが心配する。それが申し訳なかった。
……今夜はしっかりと切り替えて、寝床に入りたい。
懸念事項等は取りあえず、明日何とかすればいい。ここで思案していても仕方ない。ウイスキーを少し嘗めて眠気を促し、ぐっすりと眠ってしまおう。
いまいち交通整理ができていない思考を頭から追い出さんと、圭一郎は両頬を挟むように張った。鋭い痛みに顔をしかめたが、いい具合に頭がすっきりした。
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