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第10話
「……けーくんの、すごく熱いね」
リョウは自らの下腹部に手を置いて、そこを撫でながら嬉しそうに微笑んだ。
「それに、大きい……気持ちいい……」
「リョウ……」
明け透けだが、たまらなかった。圭一郎はリョウの背中を掻き抱くと、突きあげるように緩慢に腰を揺らす。腸壁を擦り、熱と快楽が生まれる。
「あっ……あ……、や、ダメ……!」
リョウがかぶりを振り、両腕と両脚で圭一郎の上半身をきつく挟んだ。「ダメ、動かないで」と切なげな声で謂われる。身体を圧迫され、その苦しさに眉を寄せながら、言われた通りに律動をやめれば、裸体での拘束は解かれた。
「どうした」
「……おれが動くって言ったのに」
見上げた先にあるリョウの表情は、珍しくむすっとしていた。唇を尖らせ、こちらにコンプレインを突きつけてくる。
「ちゃんと満足させるから、おとなしくしてて」
「……あ、あぁ……、ッ……」
初めて、怒られたかも知れない。少しばかり動揺したものの、怒った顔も可愛いことを知り、こういうのを怪我の功名と言うのだろうかとくだらない考えが頭に浮かびながらも、ぎこちなくうなずいた。と同時に、リョウは腰をゆるゆると浮かせ、そして落とした。その動作が繰り返されていく。
「んぁ……、あッ……あんっ……!」
大胆で的確な動きだった。まるで軟体動物のような蠢きと感触で圭一郎のペニスを責め、加えて前立腺に亀頭を擦りつけ、リョウは悦び始めた。滑らかな律動だが上品ではなく、俳優然とした整った顔に獣の臭いをまとわせ、男とは思えない高い声で悩ましげに喘ぐ。
そんなちぐはぐな痴態が、圭一郎の情欲を激しく煽った。
「あ……、また、おおきくなった……」
「……そりゃあ、なるだろ」
嬉しそうに実況してくるリョウの腰を抱き、掠れた吐息で笑う。どことなく輪郭がぼんやりとした瞳に相手の潤んだ瞳を映し、恍惚と見つめ合う。……目には見えないが、自分たちの間にはきっとハートが飛び交っているのだろう。小っ恥ずかしいことを思っている自覚はあった。
「けーくん、ッ……気持ち、ぃ……?」
「あぁ……、すごくいい……」
そう答えれば、リョウはふにゃっと幸せそうに笑い、「良かった」と言った。上下、左右に、まるで油の上を滑るかのように揺れ、圭一郎も自分も追い込んでいく。
「あーッ……アッ……ぁ、ン……!」
「……リョウ」
「ん……ぁ、っ……は……」
乱れるリョウを見つめているのは愉しい。見ていて飽きることはない。けれども、やはり自分も彼を愛したかった。怒られた時はその時で、そうなったとしてもご褒美だと、いささか危ない思考がはたらいた。
所在ない両手をリョウの胸元に這わせれば、彼はびくっと小さく飛び跳ね、「ひゃっ」と竦んだ声をあげた。思わず、口角がにやりと上がる。両の親指で薄い色の乳首を触ると、繋がった部分がきゅうっと締まり、頭がくらりとするほどに気持ち良くなった。
「あぁっ! ……や、けーくん……だめ……!」
「駄目か?」
「んっ……だめ……あっ、ぁ……でも、いい……」
どっちなんだと小さく噴き出しながら、圭一郎は尖りを優しく摘み、くりくりと弄った。リョウは背中を仰け反らせ、熱く切なく鳴く。彼のペニスはだらだらと我慢汁を流し、ふたりの腹の間で重たげに揺れていた。
「これくらいなら、いいだろう?」
「あぅ……、ん……アッ……」
「あぁ……気持ちいい……出そうだ」
ぷっくりと膨れた尖りをいじめながら、圭一郎は低い声で言った。それから、右側のそれにしゃぶりつく。舌で先端を転がしたりやわく吸ったり、軽く噛んだりすれば、リョウはさらに声を漏らし、ぶるぶると震えた。
「……あああっ! や、ッ……あっ、……だめ、だめ……!」
極まった声がぱらぱらと降ってきた。意図せず肉体が大きくうねった拍子に、前立腺を深く抉られたようだった。これ以上にないほどに苦しげに、けれどもうっとりとした至極の表情で、リョウは絶頂を迎えていた。
それに合わせて、精液を搾取せんと言わんばかりに、直腸は情熱的に圭一郎の性器に吸いついた。あまりの気持ち良さに、圭一郎もひと呼吸ほど遅れて熱を放った。
精嚢が引き締まり、尿道が痙攣し、どくどくと脈打ちながらザーメンを腸壁にぶちまける。……約7秒間の強烈な快楽が引き潮のごとく消えていくと、身体はどっと疲れ、脱力した。
「はぁ……はぁ……、っ……」
「あ、あ……けーくん……」
だらりと弛緩したリョウが、ぐったりと体重をかけてくる。水の粒と汗で濡れた熱い身体だった。圭一郎は荒々しい息を整えながら、彼を優しく抱きしめた。
「……リョウ」
小さく震えながら細切れた嬌声を漏らし、絶頂の余韻に浸る恋人の濡れそぼった髪を撫でる。ほどなくして、枝垂れ柳のように項垂れていた頭をあげ、リョウは少しばかりむくれた面を向けてきた。
胸を触ったことを怒っているのだろう。けれどもやはり、怒った顔も可愛い。思わず頬を緩めれば、「何で笑ってんの」と血色の良い唇が尖った。が、それはほんの少しの間だけだった。リョウはまた例の蜂蜜の笑顔にむせ返るほどの色気を漂わせると、左右に広げた唇を圭一郎の唇に擦りつけてきた。
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