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☆9
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『いらっしゃいませ~。』
『あ!ヒナちゃん。』
『あ、どうも~。』
『久しぶりだね。戻って来たんだ。』
『はい~。また、よろしくです♪』
シンと会った翌日には、バーのウェイターに
復帰した。
マスターも、ウェイター仲間も
かつての常連さんも、半年も経つというのに
覚えていてくれて、大いに歓迎された。
今日も色んなお客に、呼ばれて
お酒を奢ってもらって・・・、
いい感じに酔っていて上機嫌だ。
その時、顔見知りの客が俺の側に来て、
そっと話しかけてきた。
『ヒナちゃん。今日のお相手は決まった?』
この店は、トラブルさえ起こさなければ
客と寝るのはOKだったりする。
もちろん合意のうえで、なら。
なにか、俺たち従業員が危ない目に会えば
マスターの制裁がある・・・・って事も
周知の事なので あまり深く考えずに
相手が見つかるのも、この店のいいところ。
『えへへ~、まだですよ。』
『俺なんかどう?』
『えー?どうしようかな~。』
正直、あんまりタイプじゃないんだけど。
でも、セックス上手いかもしれないし、
どうしよっかな~。
『僕の家なら いつ来てもらっても、
何日いてもらっても全然、構わないよ?』
『え・・・・・。』
『好きに使っていいし、何しても
いいよ。』
『え・・・・・。』
―― おお。
それはなんと、美味しい話でしょうか。
シンの家も居心地いいんだけど、そろそろ
自分の居場所も何個か確保しておきたい。
シンだって、彼氏を呼びたいだろうし。
『とりあえず、今日してみない?』
『・・・んー。・・・・いいですよ?』
『よし、決まり。終わるの0時だっけ?』
『はい。じゃあ後で。』
よっしゃー!
いいカモ、ゲ―――ットッ!!
戻ってきてよかった!
その時の俺は、浮かれて
なにもかもうまくいっているって
そう 思い込んでいた。
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