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☆12

* * * * * * * * 『ん・・・・・・』 優しく、髪をすかれる感触に ゆっくり ゆっくり意識が浮上していく。 『ん・・・な、おき・・・・』 『・・・ヒナちゃん。』 え? 『――――っ!!』 直紀じゃない・・・・っ! はっとして、目を開けると・・・ バーで誘ってきた男が、 心配そうに覗きこんでいた。 『ヒナちゃん。大丈夫?』 『・・あ、はい。あ、・・・え・・・・と・・名前・・・』 『ああ。言ってなかったね。草壁だよ。』 『草壁・・・さん・・・。』 顔にかかった前髪をはらおうと手を顔の 辺りに持ってくると・・・縛られていた跡が くっきりと残っているのが見えた。 『わっ・・・すご・・・・。』 『ああ・・・ごめんね?』 シュン・・と項垂れる草壁さん。 やり過ぎた、とは思ってるらしい。 まぁ・・・気持ちよかったし、いっか・・・と、 そこで・・俺は とある重要な事を 思いだし、慌てて布団を剥いで パンツを持ち上げ、確認した。 ・・・自分のアレを。 『あ・・・よかった!チンコついてた!』 『あぁ~、。それも ごめんね・・? ちょっとキツかったね。』 『・・・・・、ちょっと・・・・?』 ちょっと、っていうか、かなり痛かったん ですけど・・・。 『ヒナちゃん、ネコなのに意外といいモノ 持ってるから・・サイズ間違えたんだよね。』 『・・チンコ もげるかと思いました・・・』 『ははは。そんな事しないよ。』 ふふ、と笑って 草壁さんの手が優しく頬を撫でて、チュッと おでこにキスを落とされる。 『朝まで寝てていいよ。帰る時は車で 送ってあげるから。』 そう言って、草壁さんは部屋を出ていった。 よかった・・・今、帰れって言われても だるくて動く気しないし・・・。 ぐるりと部屋の中を見回す。 ―― 来た時も思ったけど・・・立派な家。 シンのアパートの部屋の全部の面積より この部屋の方が遥かに広いよなぁ。 肌触りのいい布団に、寝心地のいいベッド テレビも冷蔵庫もあるし、 奥のドアの向こうにはトイレとお風呂まで あったりする。 ここを好きにしていい、って言ってくれた。 いつでも 好きなだけいてもいいって。 なんにも しなくていいって。 グータラな俺には天国みたいな・・・ こんな いい話、滅多にない・・・。 なのに・・あんまり乗り気じゃないのは なんでだろう。 なんで・・・・ さっき俺は・・・直紀を 思い出したんだろう。 優しく髪を撫でられた、あの感触。 ・・・あのせいかな。 『あー!もう!やめやめ!』 1つの事を深刻に考えるなんて、 俺らしくない!! 俺は、沸き上がってくる得たいの知れない 気持ちを・・・、心の奥深くにしまいこんで 見えないようにフタをして目を閉じた。

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